風にころがる企業ホーマー

企業法務や経営に関する話題を中心に、気ままに情報発信してます。

タグ:NBL

東京都暴力団排除条例が、2011年10月1日から施行されます。

このBlogでは過去に何度か、いわゆる「暴排条項」について書いてきました。
取引の相手方が暴力団関係者だった場合には契約を解除できる、というようなことを契約書に盛り込むアレですね。

(参考)
・「暴力団排除条項について考えてみた」シリーズ
・「反社会的勢力対応のいま -金融法務事情1901号より」

昨年4月頃から金融機関が、銀行取引約定書や普通預金規定などに暴排条項を盛り込むケースが増えてきているようですが、特に後者については導入時にいろいろと苦労があったという話を聞いています。
さらには全国銀行協会暴排条項の参考例を公表するなどしており、いよいよ暴排条項に対する認識が高まってきている状況ではないかと思います。

さてそのような中で、「東京都暴力団排除条例」が公布され、今年の10月から施行されることとなったわけです。
田中克幸弁護士、鈴木仁史弁護士、清水保晴弁護士による、この条例に関する詳細な解説が、NBL952号に掲載されていて、これがまた非常にわかりやすいので、法務担当者の皆さんには目を通しておくことをお勧めします。

話は少し逸れますが、私の個人的な感覚からいって、かなりの大企業さんから契約書案を提示された場合であっても、暴排条項が盛り込まれていることは、現時点では1~2割程度のように感じています。
金融関係の方々は割と早くから対応をされていて、既に何らかの契約書を取り交わしている取引先との間でも、「反社会的勢力と関係がないことの覚書」などをあらためて取り交わすケースが見受けられますが、その他の業界ではまだまだこのあたりの認識がそう高くないように思っています。

しかし今回の「東京都暴力団排除条例」は、
あなたの会社にも影響があるのですよ!
ということをお伝えしたいと思います。

しかし今日はここでタイムアップ。
続きはまた近日中に書きたいと思います。
(感じの悪いバラエティ番組のような終り方ですみません)
このエントリーをはてなブックマークに追加

少し前の話になりますが、金融法務事情 1901号において、「反社会的勢力への実務対応 ―2010年夏バージョン」という71ページにもわたる特集が組まれていて、非常に興味深く読ませて頂きました。

「金融法務事情」という雑誌の特性上、金融機関、特に今回は銀行が直面する反社対応がメインの話題でしたので、金融機関の法務担当者でない方からすると、「そんなん知らんわい」という部分も多かったのではないかと思います。
しかしせっかくの機会ですから、このあたりでいったん、「反社対応のいま」というべきものを簡単にまとめてみたいと思います。


そもそも昨今、反社会的勢力への対応だとか、暴排条項導入の必要性だとかが声高に言われるようになったのは、平成19年6月19日のいわゆる「政府指針」やその「解説」がきっかけでしょう。
このあたりは、内閣府のHPにきれいにまとまっています。

上記指針等は、前年の蛇の目ミシン最高裁判決に影響を受けていることは間違いないのですが、「反社会的勢力との関係遮断を内部統制システムに位置づける必要性」という項目において解説がなされているとおり、取締役会の責任として反社対応を行うべきことが明確化されました。


とはいえ、「どうすればいいのか」「どこまでやればいいのか」ということは、業界や会社規模によっても当然違ってくるので、一律かつ明確な基準というものは存在しません。
そのため、たいていの会社においては、
①契約書に暴排条項を盛り込む
②取引先などの審査時に反社チェックを行う
という対応を採るのが精一杯というところでしょう。

さらにいえば、上記①についても「どのような条項がより有効か」ということについて様々な方が検討をされているのが現状です。
このあたりはこのBlogにおいても、過去にちらっと紹介させて頂いていますので、ご興味のある方はご覧ください。
1回目の記事
2回目の記事
3回目の記事

さらに全国銀行協会が「銀行取引約定書に盛り込む場合の暴力団排除条項の参考例について」という、暴排条項案を発表するなどという動きもあり、暴排条項のスタンダードな表現というものも形成されつつあります。
(とはいえ、全銀協の暴排条項案は、銀行特有のものですので参考にはなりますが、そのまま一般の事業会社が使えるようなものではありません。)

このあたりは、「属性要件」と「行為要件」の二段構えの暴排条項という形式が既にデファクト・スタンダードとなっているように見受けられます。
しかし属性要件をどこまで広げるか、また「グレー」であった場合にどう立証するか、という大きな問題が横たわっています。


また、いくら暴排条項を整備したところで、実際に反社会的勢力との関係を遮断しようと考えた場合、上記②の反社チェックを行わないことには、「契約書という形式だけは整えました」ということにしかなり得ません。

そこで悩ましいのが、「じゃあ、どうやって反社チェックをするのだ」というところですね。
これは当然なんらかのデータベースの存在がない限り、チェックのしようがありません。

現時点において最も整備されたデータベースを持っていると考えられるのが、まずはやはり警察。それから証券取引所。さらに証券会社や銀行などの金融機関。あとは専門の調査会社でしょう。
ちなみにメガバンクといわれるような銀行は、グループ各社でデータベースを共有しているようですが、驚くほどの情報を保有しています。

ここで、自助・共助・公助という話題もあります。
つまり自社でデータベースを構築する(自助)、業界でデータベースを構築する(共助)、警察などの公の機関に照会をかける(公助)、などという方法で情報を収集するという話です。
しかし金融機関でもない限り、上記のいずれについても精緻かつ新鮮な情報を保有し続けることは難しいと言わざるを得ないでしょう。


そうすると私たち一般の事業会社の法務担当者としては、「日経テレコン21」などを利用して、取引先などが過去に新聞記事になるような事件を起こしていないかチェックしてみる、そして怪しい情報がみつかれば調査会社に調査を依頼してみたり、警察に照会をかけてみる、というくらいの対応を行うのが精一杯でしょう。
警察への照会ということでは、平成12年9月14日付にて、「暴力団排除等のための部外への情報提供について」という通達が存在します。
とはいえ私の知る限り、「暴力団にほぼ間違いない」というようなところまで調べてから照会をかけない限り、警察はあまり親切に対応してくれません。

ところで先日、日本証券業協会と警察庁がデータベースの利用に関して協力関係を構築するというようなニュースがありましたが、やはり金融機関でない私たちにとっては、ちょっと遠い話のように感じてしまいます。


このように精度の高いデータベースの利用というものが難しい現状からすると、いま私たちにできることは次のようなことになるのではないかと思います。
①取引先について「できる範囲」で調査を行う。
②契約書に「暴排条項」を入れておいて、事後的に反社であることが判明した場合に備える。

特に①の調査の精度を上げられない現状からすると、②の暴排条項を徹底的に契約書に盛り込んでいくことが重要になってくるのではないかと思います。


以上、自身の備忘録の意味もあって、ざっとまとめてみました。

なお、「NBL」933号において、鶴巻暁弁護士が、「反社会的勢力データベースの現状と課題」というテーマで論考を出されていますので、こちらも参考になると思います。

ちなみに、
金融法務事情1901号の座談会は、小田大輔弁護士と警察庁の清野氏のバトル(というと失礼か?)が非常に白熱していて面白いので、是非ご一読頂きたいと、個人的にお薦めします。
このエントリーをはてなブックマークに追加

↑このページのトップヘ