風にころがる企業ホーマー

企業法務や経営に関する話題を中心に、気ままに情報発信してます。

タグ:著作権

数日前の日経新聞でEUの著作権制度が改正されるというようなことが小さく報じられていましたが、今日(2016年9月21日)の日経新聞朝刊には、このテーマに関するフィナンシャル・タイムズの翻訳記事が掲載されていますね。

具体的には、
「EUのネット著作権の規制強化案、技術革新そぐ恐れ」
 というタイトルで、このようなことが書かれていました。

(略)フィナンシャル・タイムズ紙などのニュース発行者は「グーグル・ニュース」などのニュース検索サービスがコンテンツを一部でも表示した場合、料金請求権を得ることになりそうだ。

 だが、コンテンツ所有者がしっぺ返しを食らうリスクもある。スペインとドイツがニュース発行者のために類似の規制を導入しようとしたが、ニュース発行者はもうかるどころか、アクセス数や広告収入が減少した。 

フィナンシャル・タイムズ紙などのニュース発行者は「グーグル・ニュース」などのニュース検索サービスがコンテンツを一部でも表示した場合、料金請求権を得ることになりそうだ。

また、もう少し詳しい記事(やはりフィナンシャル・タイムズの翻訳)が昨日付の電子版(有料会員でなくても読めるようです)に掲載されていることに気づきました。

これはいわゆるスニペット(検索結果の ↓ 赤で囲った部分)を表示するのであれば、Googleニュースなどの「情報収集サイト」は、新聞社などに対価を払うべきだ、というEUが示した方針を批判する内容の記事です。

  スニペット

ちなみに先ほどの日経新聞の引用箇所に出てくる、スペインとドイツの例は、ココ(IPFbizさんの記事)にわかりやすくまとまっています。

この問題、日本では2009年の著作権法改正(第47条の6)で解決している(と思う)のですが、なぜ今EUでこんな話が出てくるのかな、と少々不思議に思うわけですね。


そのようなわけで、日本で同様の法改正が行われるというようなことはないと思いますが、面白い話ではあるので、しばらくこの問題をウォッチしていきたいと思っています。


以下、自分の備忘も兼ねて、いくつか参考になりそうなサイトへのリンクを貼っておきます。

「第368回:欧州の著作権法改正リーク条文案と司法裁ハイパーリンク判決」(無名の一知財政策ウォッチャーの独言)

「EU:新著作権法の骨子案を公表・検索エンジンには検索結果への著作権使用料の支払いを義務付け」(business newsline)


State of the Union 2016 : Commission proposes modern EU copyright rules for European culture to flourish and circulate (EU Commission/Press Release)

  そのQ&A


(一つステキな論文をみつけたけど、どうも見えてはいけないもののようなのでリンクは貼らない)

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Blog のタイトルに「入居作業中」と書いてある経緯さえ、ほとんど誰も覚えていないのではないかと思います。
僕自身、いったいいつになればBlog の引越しが終わるのか、皆目見当もつきません。
※その後無事に引越しを終え、タイトルも元に戻しました

とはいえここ数年、Facebook やTwitter などでちょこちょこと思ったことを書いていても、そこはかとない「アウェー感」を感じており、僕にとってはやはりBlog が法務・・・ではなく、ホームなんだという思いを強くしています。


そんなわけで、「今年は更新を再開しよう」と決めました。
実は1月にそう決めたのですが、気付いたら2月になっていました。
誰にも宣言しておかなくて良かったです。


振り返ってみると、最後に更新したのはほぼ2年前。
長らくご無沙汰しておりました!

さて、今日こうして更新するからには何か「これは!」というネタがあるのかといえば、特にそういうわけでもありません。
リハビリというかウォーミングアップというかそんな感じで、今朝新聞を読んでいて思ったことなどをちょっと整理しておこうと思います。


で、整理しようと思ったら、既に企業法務戦士さんが「危険な誤報」というタイトルでキッチリまとめられていたので、今さら僕が目新しいことを書けるわけでもありません。
でもまぁいいではないですか。リハビリだし。


さて、何の話かというと、2月16日の日経新聞(朝刊)の記事ですね。
「偽ブランドなど知財侵害に最低補償額」と題して、以下のような記事が掲載されていました。

政府は偽ブランドなどで知的財産を侵害された場合に最低額の補償を受けられる新たな制度を設ける。被害額の算定が難しい場合でも侵害行為を立証できれば最低額の賠償金を受け取れる。権利者の泣き寝入りを防ぐ狙いで、商標法と著作権法の改正案の今国会への提出を目指す。

補償額は商標で1万~3万円。著作権では1件当たり数百円から数万円程度となる見込みだ。

 

さらに2月17日の日経新聞 「TPPと知的財産」という面白い連載記事を読んでいたところ、以下のような記載があり、「そうだよな~」と思ったわけです。

山田太郎参院議員は、米韓自由貿易協定(FTA)により一足先に著作権保護を強化した韓国を視察。「著作者ではない者が未成年の侵害者を、警察への通報をちらつかせて脅し、示談金を得ようとする動きが社会問題になっている」という。  
(一瞬、山本太郎議員と見間違えましたが)
これ、やはりあると思うんですよね。

確かにこの連載記事にも書いてあるとおり、
実際にはTPPでは日本政府からの働きかけもあり、非親告罪化の対象は「故意」による「商業的規模」で、かつ「権利者が市場で利益を確保することを困難にする」利用に限定された。日本政府は国内向けにも、二次創作への配慮を明言している。
ということで、非親告罪の対象は限定されることにはなっています。

とはいえ、気軽にSNSなどで写真や文章をコピペしていると、悪い人が著作権者になりすまして「最低補償額でいいからお金を払え」と言ってきたり、全くの第三者が「お金を払わないと警察に・・」などと言ってくる事例がちょいちょい出てきそうな気がしています。


もちろん最低補償額が制度化されたからといって、それが直接悪用されることにつながるかといえば、そうとも言えないと思います。
また、非親告罪化の議論は分けて考える必要があるでしょう。

というのも、著作権者や著作権者になりすました人物が著作権侵害を主張してくる場合には「最低補償額」の話もセットで出てくる可能性がありますが、全くの第三者が「金払え」と言ってくるケースでは、非親告罪は問題になっても最低補償額は基本的に関係がないからです(当たり前ですが)。


ただ、訳もわからず、「そのくらいの金額なら払ってしまったほうが話が早い」と思わせる程度のそれらしい「補償額の基準のようなもの」があると、そこにつけ込む人たちも一定数出てくるのではないか、と懸念しているわけです。
特になりすましには注意が必要でしょう。

そのようなわけで、商標権もそうですが、特に著作権について、「最低補償額」なるものが導入されることには、この場末のBlog で静かに反対表明してみようと思います。

ま、そもそも誤報かも知れませんが。 
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はい!皆さんこんにちは!

いま、日本全国老若男女を問わず話題沸騰中の法務系Tips Advent Calendarのバトンを、企業法務マンサバイバルのはっしーさんから受け取りました。

はっしーさんからは、

というわけで、@caracalooさんから引き継いだ法務系Tips Advent Calendarバトンを、伝説の法務系ダブルボケ漫才コンビ「カタアンドヒロ」のヒロこと @hiro_oceanにお渡しします。

と、身に余るような言葉でご紹介頂いており恐縮していますが、ひとつだけ誤解のないように言っておくと、ボケているのは@kataxさんだけです。僕は正気です。

さて、あまりに久しぶりのBlog更新なので「引用ってどうやるんだっけ?」「リンクはどうすんだっけ?」などといちいち操作に戸惑いながら書いてます。リハビリみたいなものなので内容は二の次です。もともと内容は二の次ですが、そこは無視してください。

ということで本題に入りまーす!

ここ半年ほど、訳あって著作権に関するセミナー講師をする機会に多く恵まれています。
対象は、「著作権という言葉を知っている程度」という方から「仕事で必要に迫られて断片的に知識を身につけた」というような方が中心です。

その中で何度か、「もう少し著作権のことを勉強したいのだけど、おすすめの本はありますか?」というような質問を受けてきました。

僕自身、著作権に関して特別熱心に勉強してきたというわけでもなく、個人的な興味で本を読んだり、仕事で必要な範囲+α(Blogのおかげで「+α」を人より大きくしようというモチベーションが大きかったとは思います)を身につけてきたという程度のものでした。
そんなわけでこの半年ちょっとのあいだ、かなりの量の著作権に関する本を買いあさって目をとおしてきました。

で、「あ〜、これは入門書としてなかなかいいんでないの!?」と思うような本にも出会ってきました。
異論も多くあるかと思いますが、この本はその一冊。

クリエイターのための著作権入門講座[改訂第2版]クリエイターのための著作権入門講座[改訂第2版]
(2013/08/10)
一般社団法人 コンピュータソフトウェア著作権協会

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法務系Tips Advent Calendarに参加されている皆さんからすると、簡単すぎて退屈な部類に入るかも知れませんが、「法務担当者だけど、実は今ひとつ著作権のことわかってないんだよね」というような方に是非お薦めしたい一冊です。

お薦めのポイントは、まず何といっても理解しやすい文章で書かれていること。とはいえ、ほどよい幅と深さのある内容なので全体像を把握しつつ最低限の知識が得られること請け合い。そして2013年8月に改訂されたばかり!
待てど暮らせど改訂されない某判例集にも見習ってほしいものです。

ということで「これからちょいと勉強しようかな」という向きにお薦めするなら、今はこの本かなと思っています。
ちなみに改訂前のものが本文159ページで改訂後が同170ページ。値段は変わらず1,900円+税とお財布にもやさしい。
法務担当者などでこの手の本を読みなれている方であれば、それこそあっという間に読める程度の厚さです。


TPPでの議論も盛り上がってきたこの時期、法務系Tips Advent Calendarのカウントダウンに合わせて年末までにコソ勉するのにいかがでしょうか。

以上、何となくお茶を濁しました何となくうまくまとまりました!
これが「Tips」と言えるかは微妙ですが、まぁいいではないですか!
明日は@jun_k00さんですね。
バトンをお渡ししまーす!

(これを機会にBlogの更新もがんばります)
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「経済学101」(既存のエントリーは「経済学101」ではなく、"rionaoki.net"に残されています)の青木理音さん(@rionaoki)の新著。



上記Blog「経済学101」(現在は"rionaoki.net")から、テーマごとに面白い記事をピックアップして、一冊の本にされたものです。

テーマは下記のとおり(章立てのみ抜粋)


第1章 IT企業の動向
第2章 ソーシャルメディア
第3章 新聞・放送・出版
第4章 日本・教育・日米比較


このようなホットなテーマについて、主にアメリカのニュースやBlog記事などを紹介しながら、それを経済学的な観点から「斬る」というスタイルの一冊です。
この「斬る」という言葉は、いかにも使い古された表現ではありますが、本書での青木理音さんは、ほかに適当な言葉が見当たらないほど、切れ味鋭く徹底的に斬っていらっしゃいます。
また、この小気味よいまでの斬り具合が、理音さんならではの持ち味でもあるのでしょう。読んでいて気持ちがよいです。

さて、先に「経済学的な観点から」と書きましたが、そう大上段に構えたものでもないので、おそらく大抵の方は何ら抵抗なく読み進められるのではないでしょうか。
というのも、専門用語には一つ一つ丁寧に注釈がついていますし、そもそも表現がわかりやすいので、「経済学はちょっと・・・」と躊躇する向きにも、お薦めできる一冊だと思っています。
とはいえ、平易な表現で、かつ端的に述べられているだけに、行間を読めるかどうかによって、読み手にとってのこの本の価値というものに違いが出てくるだろうとは思います。

また、「IT社会の」とタイトルに付いているだけあって、ここ2年ほどのアメリカにおけるIT企業やSNSの動向なども知ることができ、私にとってはこの辺りも非常に興味深いところでした。


しかし私が最も興味深く読んだ項目の一つが、既存の出版業界と電子書籍に関する「衰退産業が持ち出す文化議論」というもの。
一部引用したいと思います。


ではなぜ今になって出版業界は文化について論じ始めたのか。これは業界を保護してもらう口実だ。それも、「出版」ではなく「業界」であることがポイントだ。「出版」を守るためなら出版「業界」を守る必要はない。日本の農業や林業を守るために既存の業界における「文化」を保護する必要がないのと同じだ。だから、農業・林業保護の議論に株式会社導入は表立って出てこない。
(中略)
一産業が自分たちのやっていることは文化だと言い出すとき、その業界は回復の見込みがない程に衰退へと向かっている。


このエントリーは2010年2月4日付のものですが、今まさに日本において議論されていることが頭に浮かびます。


というわけで、IT、経済学、出版といったものの「いま」を知るためにも、是非一読頂きたい一冊です。
※ちなみに著作権に関する記述も多いのですが、日本とアメリカの著作権制度を厳密に区別して記載されていないので、そのあたりは読み手側で理解しておく必要があるかと思います。
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知的財産法入門 (岩波新書)知的財産法入門 (岩波新書)
(2010/09/18)
小泉 直樹

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この本は、「知的財産法入門」というタイトルが示すとおり、知的財産にまつわる法律全般の入門書として、非常にスグレモノだと思います。
非常に淡々と、しかしわかりやすく、知的財産に関係する法律や裁判例、それから現状についても教えてくれる一冊です。

「実は知財はさっぱりわからんのよね・・・」というような方にとっては、知的財産の世界の全体像をざっくり掴むのにお役立ちかと思います。
また、ある程度の知識を持っていらっしゃる方、例えば「消尽って何ですか?」と聞かれて「あぁ、それはね・・・」と冷静に答えられるような方にとっても、記憶の再確認や知識の整理に役立つのではないかと思います。


しかし逆にいえば、「主張しない本」でもあります。
「著者の考えを知りたいのだ」というような方は、間違いなく肩透かしをくらいます。
著者の小泉先生は、あくまで淡々と、かつニュートラルに、「知的財産法」について語られます。
ある意味当然のことですが、考えるのは読者の役目で、著者は、読者が考えるために必要となる最低限の知識を与えてくれるに過ぎません。

「教科書ではなく、「考えるときに使える本」を」

という編集長からのアドバイスがあったと、あとがきに書いてありましたが、まさにそのとおりに仕上がっています。
つまり、質の良い食材を与えられた読者が、自分自身で料理をすることに本書の意義があるのですね。

そしてここでさらに親切設計。
料理に「一味加えたい」と思う読者向けに、「文献案内」が巻末についています。これは、「さらに詳しいことをお知りになりたい方」向けのお薦め図書の紹介です。
それだけではなく、「参考文献」として非常に多数の書籍がきちんと一つ一つ丁寧に挙げられており、その中には裁判例も並べられています。
「文献案内」や「参考文献」でお薦めされている書籍は大部のものが多いので、「入門」からいきなりそっちに行くと挫折しそうですが、何はともあれ親切設計であることは間違いありません。
個人的な感覚としては、知的財産管理技能検定3級などを受験する方が、本書を事前に読んでおくと、スムーズに理解が進むのではないかと思います。


ところでちょうど先日読み終えたばかりの「インビジブル・エッジ」では、知的財産権、特に特許権や著作権の生まれた時代の海外事情が割と丁寧に書かれていました。
本書は日本においてそれらの権利がどのように取り入れられていったかの記述から始まっており、これまた興味深いところです。


「蔵版の免許」すなわち著作権について、「福澤屋諭吉」という屋号で出版業を営んでいた福澤は、無断出版行為対策を政府に訴えた経験がありました。



「福翁自伝」の中で、福澤諭吉さんが他人の書籍を複製しまくっていたことを述懐していただけに、少し興味深いところです。

最後に目次のうち大項目と中項目のみを抜粋しておきたいと思います。

はじめに
第1章 知的財産法のコンセプト
1 福澤諭吉と高橋是清
2 テクノロジー、ブランド、デザイン、エンタテインメントの法
3 国境を越える知的財産と各国の利害
第2章 保護されるものとされないもの
1 特許と営業秘密
2 ブランドとドメイン名
3 意匠、あるいは著作物としてのデザイン
4「個性的な表現」が必要な著作物
第3章 誰が権利を持っているのか
1 社員が発明した場合
2 ブランドが侵害された場合
3 デザインが無断コピーされた場合
4 著作物が生み出された場合
第4章 どのような場合に侵害となるのか
1 特許の心臓部分はどこか
2 紛らわしいブランド
3 デザインの類似
4 著作権の範囲はどこまでか
第5章 知的財産を活用する
1 テクノロジーの利用
2 ブランド名の使用
3 著作権のルール
終章 知的財産法をどう変えていくか
あとがき
文献案内
参考文献


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