法務担当者のためのもう一度学ぶ民法(契約編) (2009/09) 田路 至弘 商品詳細を見る |
「いまさら紹介してどうすんの?」
という声が聞こえてきそうですが、「いいものはいい」ので、今さらと言われようがきっちり紹介させて頂きます。
田路先生の「民法再入門の本」です。
「企業法務について」の kata さんが、2年近く前のエントリーで、
"法務に配属されたら何をおいても最初に読むべき一冊"
と紹介されていたことをご記憶の方もいらっっしゃるかと思います。
そしてご記憶の方は奇特な方であると認定させて頂きたいのですが、「民法の入門書として最適な一冊選手権」暫定チャンピオンというエントリーで、やはり2年ほど前に私も、以下のように本書について少し触れていました。
「企業法務について」のkataさんを初め、数々の法務系ブロガーに絶賛されている、「法務担当者のためのもう一度学ぶ民法(契約編)」が鳴り物入りでどーんと現れたのですが、僕はまだ読んでいないので、残念ながらコメントできません。
(中略)
(「民法概説」を)民法入門書のチャンピオンに認定したいところですが、上記「法務担当者のためのもう一度学ぶ民法(契約編)」の評判があまりによいので、そことの決着がつくまでは「暫定チャンピオン」ということにしておきます。
この戦いについては、いずれケリをつけたいと思います。
というわけで、2年越しでケリをつけるときがきました。
実はこの田路(とうじ)先生の本は発売当時(シャレではありません)、買っていたのですが、なかなか目を通す機会がありませんでした。
しかし今年に入ってからわが法務部門に2名の新人さんが加入したため、「ここらできっちり読んでおいて、本当によかったら新人さんにプレゼントしよう」と考えたわけです。
そして今回一読し、迷わずプレゼントすることに決定しました。
ただ、新人さんのうちの一人は他社での法務経験があり、本書も既に読んでいたということが発覚したので、他部署から異動してきた1名様に1冊プレゼントすることにしました。
ちなみにもはや今さらどうでもいいことですが、「民法の入門書として最適な一冊選手権」は、そもそも成立しないことが2年越しでわかりました。
この本は、「もう一度学ぶ」とタイトルにあることからもわかるように、決して単なる「入門書」ではありません。
表紙の食欲を増進させるようなオレンジ色。どことなく親しげな印象を与えるゴシック体のタイトル。そして図表や挿絵(P133の挿絵がシュール)などから、非常に手に取りやすい一冊という印象を受けます。
また、構成、文体、説明のどれをとっても非常にわかり易い。
しかし甘くみてはいけません。
この本に書かれている内容は、「一度民法を学んだ人」でないと、すんなり理解しながら読み進めることはできないのではないでしょうか。
もちろん、法務担当者のための民事訴訟対応マニュアルを書かれた田路先生の本です。
わかり易さという点においては非常に工夫されています。
ですから「一度民法を学んだことのある人」にとっては、民法(商法も一部含みます)が契約や契約書においてどのように使われているのか、とてもよく理解できることと思います。
このあたりは目的がはっきりしていて、大学や資格試験予備校などである程度民法を学習した経験のある法務担当者が、知識を再確認したり、そのような知識を契約実務においてどのように活用するのかを知る、という点に砕身されたものと思います。
ということで、例によって目次を抜粋したいと思います。
第1章 企業法の体系と民法
第2章 契約締結前の法律関係(信義誠実の原則の問題)
第3章 契約の締結ー意思表示と代理(民法総則の問題)
第4章 契約の解釈(契約総論の問題)
第5章 債権の効力と消滅(債権総論の問題)
第6章 取引の終了
第7章 契約を巡る紛争解決(裁判と執行の問題)
このように、「契約の締結段階から契約が終了するまで」の一連の流れを通して、法務担当者が知っておくべき条文・裁判例・契約書作成の方法などをおさらいすることができる構成となっています。
換言すると、学校などで学んだアカデミックな知識と企業法務実務との架け橋として最適な一冊と言ってもいいのではないでしょうか。
各章とも、「設問→大きな話→小さな話」という流れが徹底されていて、また、必要な箇所で必要な条文が記載されています。
そして学説などには踏み込まず、裁判例をわかり易く採り上げるというスタイルが徹底されています。
記述のレベルも、「この程度の知識は持っておいてほしい」という意味でまさに「絶妙」です。
私の働いている会社では時間の都合から、「買ってあげるからきっちり読んでおいて」という方法になってしまいますが、できることなら、この本を使って研修をしたいものです。
必要に応じて口頭で補足していけば、この一冊でかなり充実した研修ができるのではないかと思います。
そのようなわけで、是非読んで頂きたいオススメの一冊です。