弁護士や司法書士の先生方は、「職務上請求書」というものを使って、他人の住民票や戸籍(正確には住民票の写しや戸籍謄抄本ですね)を取得することができるのは皆さんご存知のとおり。

特に司法書士などは相続登記を受託すると、全国津々浦々の役所から古い戸籍を取り寄せたりする機会が多くあります。

しかしこの「職務上請求書」で住民票や戸籍を取得すること自体を商売にしてはいけないことになっています。
あくまで業務上必要な場合に限定して取得が許されているわけです。

ところが一部の司法書士などが、住民票や戸籍を取得して対価を受け取るという商売をしていたことが問題となり、「職務上請求書」の取扱いが7~8年前から随分と厳しくなっています。
更に個人情報保護法の施行の影響もあり、一部の地域では「職務上請求書」を使って戸籍や住民票を取得した場合、取得された人に対して役所から「あなたの住民票が取得されましたよ」という通知が行く措置が採られるようになったりしています。


さて、その「職務上請求書」とは別ルート、弁護士でも司法書士でもない一般人や企業が、第三者の戸籍や住民票を取得する方法があることをご存知の方も多いかと思います。

例えば住民基本台帳法第12条の3


自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために住民票の記載事項を確認する必要がある者



或いは戸籍法第10条の2


自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合 権利又は義務の発生原因及び内容並びに当該権利を行使し、又は当該義務を履行するために戸籍の記載事項の確認を必要とする理由



これを根拠に第三者の住民票や戸籍を取得するのです。
一般的に、債権者が債務者の住民票や戸籍を取得するときの根拠になる条文ですね。

これらの取扱いは最近どうなっているのかと思ったのですが、特段厳しくなったということもないようです。
対象者(債務者)に対する債権の存在を疎明する資料を提出すれば、思いのほかあっさりと住民票が取れてしまいます。
提出する資料は例えば契約書や請求書などですが、原本を見せることもなく、コピーを提出するだけでも取れてしまいます。(もちろん「疎明」できなければダメなので、場合によっては原本を見せろと言われることもあるかも知れません)

さてこの手法、BtoCビジネスで個人相手に債権を有していて、その個人の住民票や戸籍を取得するというのはよくある話ですが、実はBtoBビジネスで法人相手に債権を有している場合でも、案外使える手法なのです。

例えば債務者である会社に宛てて内容証明郵便で請求をしても会社はもぬけの殻で返送されてくる。
仕方がないので登記簿に記載されている代表者の住所に宛てて内容証明郵便を送っても転居先不明で返送されてくる。

そんなときには、代表者の住民票を取得してしまえば、現住所を確認することができる可能性が案外あります。
もちろん本気で逃げているような人は、住民登録の変更をきっちりすることなどないので、「登記簿と同じ古い住所のまま」ということもよくあります。
しかしこれで居所が掴めることも思いのほかあるので、法人相手の債権回収の手法の一つとして試してみる価値はあります。

ちなみに住民登録は変更していないけど、転居届だけはしっかりと郵便局に出している脇の甘い人もいます。
そうすると返送されてきた郵便物に、転居先住所のシールが貼られたりしているので、住んでいる場所がわかることがあります。

そんなわけで、債権回収のちょっとした豆知識でした。