風にころがる企業ホーマー

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タグ:会社法務A2Z

先日ご紹介した「Business Law Journal」2月号において、「Business Law Journal」「ビジネス法務」「会社法務A2Z」のいずれかを定期購読し、さらに商事法務メルマガで情報収集することを勧めていらっしゃる法務担当者の方がいらっしゃいました。

この法務担当者の方はいわゆる「一人法務」の方だったと記憶しているのですが、法務部門が少人数であればなおさら、「どうやって情報収集するか」ということが重要になるかと思います。
特に法改正や目新しい裁判例などについては、少なくとも、「そのようなことがあったな」ということが必要なときに”ピン”とくるような仕組みを作っておく必要があるでしょう。
少人数でやっているとどうしても、積極的に収集しない限りなかなか情報は集まりませんし、必要な情報を法務担当者が持っていないことは、会社の法的リスクを高めてしまうことになります。
そのような意味で、上記の法務担当者のアドバイスはとても有益ではないかと思います。


さて、その紹介されていた雑誌のひとつ。「会社法務A2Z」
前にも書いたことがある気がするのですが、これ、「エイトゥーズィー」と読むのが正解。私はずっと「エートゥーゼット」と、いかにも日本人らしい読み方をしていました。
編集部の方に聞いた情報なので間違いありません。「エイトゥーズィー」と読んで下さい。


今月の「会社法務A2Z」で興味深かったのは、「ビジネス法務の部屋」でおなじみの山口利昭弁護士による「企業法務の視点から見る不正調査の実状と課題」という記事。

ここでは、子会社が不正を働いた場合に親会社が負う責任と、そのような不正を防ぐための内部統制・内部監査のあり方について、非常にリアルな「不正調査の実状」が紹介され、また実践的な「不正調査の方法」が提案されています。


そもそも会社法上の内部統制システム構築義務の根拠とされる、以下の法令


会社法第362条4項6号
取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備

(法務省令)↓
会社法施行規則第100条1項5号
当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制
※これは「法務省令で定める体制」の一つに過ぎません。念のため。



上記の法令からすると、内部統制システムを構築するにあたり、子会社をそのシステムに取り込む必要があるのは明白なのですが、そうはいっても別会社。
不正の疑いがある場合にこれを調査するにも、何かと障害が多いのが現状のようです。特に子会社のトップが不正に関与している疑いがある場合の調査の難しさが興味深いところです。
非常に面白い記事ですので、是非読んでみて下さい。


さて次に、「会社法務A2Z」1月号の29ページ。
ここは是非、ご覧頂きたい。
「法務分野における情報発信の新潮流」とのタイトルで、我らが「ITエンジニアのための『契約入門』」が紹介されています。
おかげ様で予想以上の売れ行きを記録した「ITエンジニアのための『契約入門』」ですが、しぶとくこのような場所に登場させて頂いたりしております。

第一法規編集部の皆さまにはこの場を借りてお礼申し上げます。


そのようなわけで、2011年最初のエントリーは、若干宣伝のにおいのするものとなってしまいましたが、本年も当ブログをご愛顧頂ければ幸いです。
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鐵丸先生のこんな法務じゃ会社がつぶれる―最新ビジネスロー問題を5分で解決 (鐵丸先生の“明快答”で、どんな法務トラブルも一発解決!)鐵丸先生のこんな法務じゃ会社がつぶれる―最新ビジネスロー問題を5分で解決 (鐵丸先生の“明快答”で、どんな法務トラブルも一発解決!)
(2010/09/27)
畑中 鐵丸

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第一法規さんから頂きました。ありがとうございます。


さて、本書のターゲットは企業法務担当者というよりはむしろ、中小企業の経営者や、ある程度大きな企業の管理職以上といったところでしょうか。

「世の中、コンプライアンス、コンプライアンスってうるさいけど、ウチは大丈夫なのか?」

というような、自社のコンプライアンス体制に若干の懸念を持っていらっしゃる中小企業の経営者の方などが、割と手軽に企業法務全般のトピックに触れることのできる一冊ではないかと思います。

「はじめに」で、


・企業法務をおろそかにする会社が潰れる時代
・これからの企業のトップは、法律オンチでは務まらない
・経営トップに対するリアルな法務指南の現場を公開



という項目が立てられているところからも、そのようなターゲット像が読み取れます。


とはいえ、もちろん私たち法務担当者にとっても、「へぇ~」と今更ながら知るようなことも多くあって、なかなか面白い読み物に仕上がっています。


まずは、例によって目次を引用します。


序章  企業法務課題の合理的整理法
第1章 企業組織運営・M&A・事業承継にまつわるトラブル
第2章 「ヒト」を使う際のトラブル
第3章 「モノ」の調達・製造・販売のトラブル
第4章 「カネ(信用・債権)」にまつわるトラブル
第5章 「チエ(技術・情報・ブランド)」に関するトラブル
第6章 営業にまつわるトラブル その1・企業間営業活動(BtoB)
第7章 営業にまつわるトラブル その2・消費者向け営業活動(BtoC)
第8章 国際法務に関するトラブル
第9章 その他の企業法務課題



目次をご覧頂けばわかるように本書のキモは、「企業法務」というものを「各企業法務活動を企業が展開するビジネス活動に沿って俯瞰する形で整理して」いるという点にあります。
この点、「企業法務課題の合理的整理法」という章をはじめに置いて、本書の構成を説明しているあたりからも、この「整理法」に対する自信とこだわりが窺われます。
確かに、「予防法務」や「戦略法務」という切り口や、「契約法務」や「コーポレート法務」という切り口より、一般的にはスッキリとしていてわかり易いのではないかと思います。

ところで著者の畑中鐵丸先生は、会社法務A2Z(”エートゥーゼット”ではなく、”エートゥーズィー”と読むということを最近知りました)にて、「鐵丸先生の生兵法務は大怪我のもと!」を連載されているので、ご存知の方も多いのではないかと思います。
パチンコ玉を想起させるようなインパクトのあるお名前も、一度聞いたら忘れられません。


さて肝心の中身ですが、1章あたり4項目前後の具体的な「相談」に対して、解説がなされ、最後にまとめとして鐵丸先生が「回答」をする、という体裁が繰り返されます。
「相談」はちょっとしたストーリー形式になっており、「ナニワ金融道」や「カバチタレ」のような、ちょっとドロっとしたテーマが多いように感じましたが、関西の言葉が使われているからそう感じただけかも知れません。
この構成についてはdtkさんが、


その一方で、著者の回答部分は比較的分り易いものの、その前の解説部分は、法務の人にとっては特に読みにくくはないけれど、この本で読者として想定されていると思われる、その他の皆さんにとっては、読みにくいかもしれない。もう少しボリュームを増やしてでも、さらに噛み砕いた解説にしたほうが親切かもしれない。さもなくば、解説部分は、思い切りよく、省略した方が良かったのかもしれない。



とおっしゃっているように、私たち法務担当者にとっては、解説部分が最も興味深い部分である反面、法務に関する素養があまりない方にはちょっと難しく感じるかも知れません。

このあたりのレベル感は、「ITエンジニアのための『契約入門』」を書いた際に、私たちも喧々諤々の議論をしたところで、ターゲットがはっきりしていないとバランスが難しいものです。

あとになって見返してみましたが、私が線を引いてdog-earをしているのも、ほとんどが解説部分でした。
というのも、解説部分には、「回答」の前提となる根拠法令や裁判例がきちんと掲載されているので、「この程度のことは全部知ってるぜ!」という法務担当者を除けば、「ほほぅ」と勉強になることも多くあるかと思います。

およそ260ページ、そして952円(税別)というお手軽な価格。法務担当者であれば、「ほほぅ」とか「へぇ~」とか言いながら2時間もかからず読み終えることができると思います。
というわけで、通勤のお供にいかがでしょうか。


ところで次回作は、「こんな会社じゃ法務がつぶれる」でお願いしたいと思います。
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