先日、珍しくわが家の小学校1年生の長男が、テストの答案用紙やら作文やら宿題やら、先生に採点されたものを僕のところに持ってきました。

半年ほど前に、「宿題がまったく出ていないようですが・・・」と先生から電話がかかってきたことがあったものの、特に宿題をやれと言うこともなく、ただ時々、こうして本人が持ってきたときに、「おお、すごいね!」などと言うくらいのことしか、僕はしてきませんでした。
そうは言っても、学校で習っているレベルのことができているかどうかは、日常の会話の中で確認しているので、「概ねオッケー」と、僕は判断していています。

それよりも今は、本人が夢中になっているサッカーを思う存分楽しめるように、サッカークラブの練習に付き合ったり、休みの日に一緒にサッカーをしたり、サッカーのDVDを買ってきて一緒に観たり、ということを優先しています。


さて、そんな長男が持ってきた採点後のものの一つに作文がありました。
学校で行われたあるイベントについての感想を書くように言われたそうで、288字詰め原稿用紙の3分の2くらいに、長男のヘタクソな字が並んでいました。

その作文には先生の赤字が入っているのですが、題名に[ ]このようなカッコがあることや、行の下に文字が2~3字オーバーして書かれていたりといったところにチェックが入っています。
そして最後に、「作文用紙の使い方を練習しましょうね」というようなことが書いてありました。

僕はそもそも、学校教育というものを大して信用していないので、「またつまらないことを・・・」と内心思いつつ、そのような指導をしなければならない先生も気の毒だよなぁ、と感じていました。

「作文用紙(原稿用紙)の使い方」なんて、「そろばんの使い方」のようなもので、これから生きていくのに、どれほど役に立つものなのか、皆目見当がつきません。
そろばんであればまだ、「暗算がよくできるようになる」というようなこともあるかも知れませんが、原稿用紙の使い方は「知っていても損はないかも知れない」という程度のことではないかと思います。

題名は一段下げて書き、姓と名の間は1マス空けて、名の下も1マス空ける。

誰が決めたか知りませんが、どうしてそのような決まりがあるのかすらよくわかりません。
それよりも作文の内容に目を向けて欲しいものです。


そこで私は、何年か前から時々書いている文章、いや、正確にいうと「ひとさまの詩を原稿用紙に書き写したもの」を長男にみせてやりました。
中原中也や室生犀星、武者小路実篤などの、気に入った詩を「何となく気持ちが落ち着くから」という理由で、原稿用紙に書き写しているものです。
これは以前このBlogでも触れたと思うのですが、作家の原田宗典さんが教えて下さったことを真似てやっているものです。

私の原稿用紙の使い方は、学校で教わるようなルールは無視。
もちろんその基となっている詩にもルールなどありません。
「いいなあ」と感じるか感じないか、です。

私は長男に、「先生は細かいことを言うだろうけど、はいはいと聞いておいて、あとは別に気にすることはない。お父さんなんか学校で作文を誉められたことが一度もないのだ」というような話をしました。

そうすると長男は、「自分も何か書いてみたい」と言い出したので、原稿用紙を一枚渡してやりました。
「何か詩を書き写したい」というので、僕の部屋にあった宮沢賢治詩集の、「雨ニモマケズ」のページをみせてやりました。
この詩は毎朝NHKでやっているにほんごであそぼでも朗読されていたので、ただ「ボー」っと眺めているだけかと思っていましたが、長男も知っていました。
そして旧仮名使いカタカナ交じりの「雨ニモマケズ」を夢中で書き写していました。

書き写すこと30分。こんな感じにできあがりました。
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久しぶりに「鏡文字」を書くなど、やや興奮して書いた形跡が見受けられますが、書き終えたあとの自慢げな表情が印象的でした。


さてさてその翌日、僕と長男はたまたま近所の古本屋に行くことになりました。
僕があれこれと「掘り出し物」を抱え込んでいると、長男がこの本をみつけてきました。

雨ニモマケズ にほんごであそぼ雨ニモマケズ にほんごであそぼ
(2005/04/26)
齋藤 孝

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ビニールに入っていて中を見ることはできませんでしたが、「本は遠慮なく買っていい」といつも言ってあるので、エイヤっと(300円で)購入しました。

家に帰ってから、「ちょっとお父さんにも見せてくれい」と貸してもらい、パラパラと見てみたのですが、これがなかなかスバラシイ。
詩だけでなく、「生麦生米生卵」といった早口言葉から、「春はあけぼの」の枕草子、果ては落語まで、何とも選ばれている日本語に味わいがある。

そしてページによっては縦に字が書いてあったり、横に書いてあったり、字が躍るように書かれていたりと、実に自由な表現がされています。

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齋藤孝さんが編集をしているだけに、「声に出して読みたい日本語」のような言葉がてんこもりの一冊で、自分の分も一冊欲しくなってしまいました。

そのようなわけで、原稿用紙の使い方よりも言葉の使い方や言葉に対する感性を磨いてあげたいな、と思っている次第です。