最近、「債権回収」が僕の中ではちょっとホット(「ほっともっと」じゃないよ)なテーマになっています。

とある会社の、割と額の大きな回収案件の中の一つに、売掛債権だけじゃなく色々な債権が含まれているものの、
「これ全部消滅時効かかってるよ」
というものがあります。

ただ、資料を遡って調べていたところ、2年ほど前に、その会社から明細付の催告書を送った形跡がありました。内容証明郵便では送っていないのですが、一応催告はしているわけです。
ただ、皆さんご存知のとおり、催告をしただけでは消滅時効は中断しません。
そしてここが微妙なのですが、上記の催告書を送ってしばらくした後に、相手方から、「お支払い遅延のお詫び」という書面が送られてきているのです。
内容としては、「一生懸命働いて返していくので、ちょっと待って下さい」というようなものです。
とはいえ、具体的な金額やどの債務についての遅延のお詫びであるかなどの記載は一切ありません。
これが債務の「承認」にあたるのかどうか、非常に微妙だと思うのです。

まあとりあえずは、「時効なんて知らんわい」というトボけた態度で請求をしてみるつもりなのですが、もし相手が時効を援用してきたときに、「お支払い遅延のお詫び」がどう解釈されるか、少し楽しみではあります。
ただ、相手方の財務諸表数年分を持っているのですが、とてもじゃないけど全額弁済は期待できない財務状況ですね。

HP上の連絡先に電話しても「現在使われておりません」だし、HP上の代表者の氏名は偽名だし、当社側が「主要取引先」の筆頭に上げられているし、怪しいことこの上ない会社なのですが、少し突っついてみたいと思っています。

ただ法務担当者の僕としては「どうやって回収してやろうか」と考え、それがダメなら「貸倒れもやむなし」という姿勢で臨んでいるのですが、僕のレポートラインである取締役は経理一筋の人だからか、「損金算入、損金算入」とはなっから回収を諦めているニオイがプンプンします。ですので、「この件、ある程度のところまで自分の裁量で進めちゃいますよ」と、牽制しておきました。

ほかにもいろいろと、過去の未収金の存在がわかったのですが、どれもバリバリの消滅時効案件なので、頭痛の種です。
ここらで一度、負の遺産をきれいにして、不良債権に適切に対応できるルール作りを進めたいと考えています。


でも、前にも書いたと思うのですが、債権回収が出口だとすると、入口である与信設定・与信管理をきっちりとしておく必要があります。
「与信を厳しくすれば、債権回収は楽になる。与信を緩くすれば債権回収は難しくなる」
という関係にあると考えているので、適切な与信管理のルールを策定する必要があります。

そのため「与信管理規程」は既に作成してあるのですが、その具体的な管理・限度額の設定については「別に定める実施基準の定めるところによる」というような形式にしているので、そろそろその「基準」を作らねば、と考えています。
ちなみに「基準」を外出しにした理由は、ある程度規程を柔軟に運用するためにも、管理部門の権限で多少の修正を行えるようにしたかったからです。


ところで以下は、債権回収について一から学びたい方に最適な一冊。


債権回収基本のき債権回収基本のき
(2008/01)
権田 修一

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この本は、債権回収のイロハを学ぶ上で非常に有用だという評判をあちこちで耳にします。

第一部「債権回収の流れを大きくつかむ」で、そのタイトル通り、回収の流れをおおまかに掴むとともに、民法その他の債権回収にまつわる法律に出てくる用語を簡易に説明してくれています。(登記簿の見方まで書いてある!)
そして第二部「こんなときどうする」で、実際に債権回収をする場合の手法や考え方が、ある程度高度な話まで紹介されています。
オススメです。


ちなみに先日ある総合商社の法務部門の若手の方とお話する機会があったのですが、彼の話す債権回収スキームに「よくそんな方法考えたなあ」と驚くことがありました。
若手の彼が何故そのようなことを思いつくのか不思議に思い聞いてみたところ、法務部門内のマニュアルに書いてある、とのことでした。
総合商社恐るべしです。
教育制度とナレッジの共有がかなり高度な次元で進んでいるようです。
ですので、彼のような優秀な若者であれば、ほんの数年間で一人前の債権回収法務パーソンになっちゃうんですね。
いやあ参った。