定期購読をしている「ビジネス法務」の7月号が、今日、手許に届きました。

「ビジネス法務」7月号では、「民法(債権法)改正の考え方と実務への影響」というテーマで、今月・来月の前後編で内田先生が民法改正について述べられており、これがとにかく面白い。
別冊NBL126号「債権法改正の基本方針」(商事法務)は購入したのですが、そのボリュームに圧倒され、まだ読んでいない私。
今回の「ビジネス法務」の記事は、内田先生が改正方針の概要について簡単に説明されているので、改正の全体像をざっくり掴むには最適なのではないでしょうか。
私もこの記事を読んで、やはり別冊NBLも局所的にきっちり読もうかな、という気持ちになってきました。(近日中に上記「債権法改正の基本方針」に解説を加えたものが出版されるとの内田先生の発言もあったので、それを待ってもよいかも)

記事の中で触れられている改正点は、

・ 債務不履行について過失責任から契約責任への転換
・ 危険負担制度の廃止
・ 事情変更の原則の明文化
・ 法定利率を変動制にする
・ 暴利行為を明文化する
・ 不実表示を明文化する
・ 瑕疵担保責任の現代化
・ 不当条項規制
・ 金銭債権譲渡の対抗要件を登記に一元化
・ 債権者代位・詐害行為取消権の優先弁済効の否定

といったところ。
いずれも現在の民法とその解釈や判例を踏まえて、どのような改正をすべきか、という視点から述べられています。

私が特に気になったのが、「不実表示の明文化」。
内田先生のお話を引用します。

不実表示は、消費者契約法4条1項1号・2項に規定されています。そこでは、重要な事柄について事実と異なったことを告げる不実告知、あるいは不利益な事実について告げない不利益事実の不告知が規定されているわけです。
現在、これは消費者契約のルールとして置かれていますが、消費者契約に特有の原則ではなくて、むしろ巧妙化した現代的な詐欺に対する新たな一般ルールではないかと思われます。そこで特則性を外して一般ルールにすること(一般法化)を提案しています。


ここまで読んで、消費者契約法を民法に取り込むことの意義について、やや疑問を感じたのですが、次の文章を読んで少し納得。

従来の詐欺ですと、欺罔の故意の立証が必要になりますが、これが大変難しいのです。欺罔の故意が簡単に立証できるような明白な詐欺は、今はだんだんなくなっていて、むしろ新しい法理で対応しなければ対処できないのが現代的な詐欺ではないかと思います。


そこまでは考えていませんでした。
欺罔の故意に基づく欺罔行為によって、相手方が錯誤に陥り、それによって意思表示をする、というプロセスのうち、欺罔の故意を立証するのは、確かに難しい場面も多いのでしょう。
まあ、そうは言っても、心裡留保、虚偽表示や錯誤などは、内心的効果意思と表示行為の不一致などといった、外からは極めてわかりづらいことを検証する必要があるわけで、詐欺だけでなく、(特に)錯誤なども併せて考える必要があるのではないかと思います。


このあたりのことは、もしかすると別冊NBLには記載されているのかも知れないので、チェックしてみたいと思います。
個人的には、意思主義から表示主義に少し傾いていく流れなのかな、と感じていますが、もう少しじっくり検討してみる必要があります。


いずれにしても、内田先生自身の言葉による民法改正の方向性に触れられる、いい機会ではないでしょうか。一読をお勧めします。