「原田宗典 武者小路実篤を朗読する」に当選(?)したので、先週の土曜日、参加してきました。

このイベントは3週連続、全3回開催されるのですが、全会出席が原則だそうです。

第1回目の今回、少し遅れて会場に到着すると、和室の襖の向こうからビートルズのGet Back が聞こえてきます。
襖を開けて中に入ると、20名ほどが座布団に座り、前には原田宗典さんが皆の方を向いて座り、音楽に合わせて体をゆすっていました。原田宗典さんの後ろにはLet it beのレコードジャケットが立ててあります。
どうやらもう、始まっているようです。
でも、「武者小路実篤を朗読」するんじゃなかったの?と戸惑う私に関係なく、大きな音でGet Backが流れ、その音に引き寄せられた近所の子供達が、原田宗典さんの後ろの窓のところからひょこっと顔を覗かせました。そして4人5人と集まってきて、窓を勝手に開けて「何やってんの?」と。
原田宗典さんは、「君たちも一緒に聞くかい?」「静かにしてられるかい?」と声をかけ、子供達を中に招き入れました。

音楽が終わると、原田宗典さんがゆっくりと話し始めました。
ビートルズの歌詞と武者小路実篤の詩を朗読することが、今日のテーマだそうです。

例えばGet Backを原田宗典さんが和訳し、それを音楽に合わせて朗読したり、武者小路実篤の詩を朗読したり、ということをしたのですが、ビートルズと武者小路実篤のコラボレーションもありました。
ビートルズのAll you need is loveの和訳と武者小路実篤の「仲良きことは美しき哉」を混ぜ合わせて、音楽に合わせて朗読するのです。

All you need is loveについては、原田宗典さんがこんなことをおっしゃっていました。
ご存知のとおりこの曲は、邦題を「愛こそはすべて」といいます。
しかし「Love」を「愛」と訳すのは原田宗典さんの感覚からすると「違う」とのこと。
そもそも「愛」という字は、人が歩きながら振り返っている姿を表していて、真ん中に「心」という字がある、つまりは、人が昔を振り返ったり、その過去を大切に思ったり、ということを意味しているそうです。
これを明治時代にナントカいう人が、「Love」=「愛」と訳したわけですが、一方、江戸時代に隠れキリシタンは、「Love」を「恩大切」と訳していたそうで、この訳の方が、「Love」の本来の意味に近いのではないか、と。
「愛する」というのは、つまりどういうことなのか、それがわからない。「愛する」ということは何も言っていないのと同じではないだろうか、というようなことをおっしゃっていました。

エリック・クラプトンの「Tears in heaven」も朗読されました。
この曲はクラプトンが、亡くなってしまった我が子に向けて作った歌だということは、私も知っていましたが、そのエピソードを原田宗典さんが、語ってくれました。
しかしさすがは小説家です。
話を聞いていると、情景がありありと目に浮かぶのです。
話の構成、表現、取り上げるエピソードが秀逸で、その時のクラプトンの様子を、映画を観るように想像することができました。
その後、曲を聞きながら朗読を聞いたところ、恥ずかしながら涙がポロポロとこぼれました。私も最愛の子供を持つ親として、あの詩はあまりに切なく感じました。

そんなこんなで約2時間。
次回は参加者全員が武者小路実篤の詩を朗読をすることになるそうです。少し照れますね。
武者小路実篤の詩の中から好きなものを原稿用紙に書いてくるように、との宿題が出されました。

最近、「じっくりと言葉を味わう」ことがなかったのですが、詩の愉しみ方を思い出し、また新たに教わることができました。
家に帰って、久しぶりにビートルズのCDを聞きました。