風にころがる企業ホーマー

企業法務や経営に関する話題を中心に、気ままに情報発信してます。

2011/07

「企業法務マンサバイバル」のtacさんが紹介されていたこの本。

会社法施行5年 理論と実務の現状と課題 (ジュリスト増刊)会社法施行5年 理論と実務の現状と課題 (ジュリスト増刊)
(2011/05/26)
不明

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この5年間で発生した会社法の時事ネタのうち、特に重要なものが論点ごとにまとめられている本なわけです。教科書を最初から最後まで通読する学習では絶対挫折する会社法も、このアプローチだとリアリティがぐっと増すからでしょうか、途端に面白い法律に見えるから不思議です。



と紹介されていて、もはや私ごときがウダウダとご紹介する意味もないと思っていた次第です。
そこで今回は、思いのほか話題になっておらず、またリアル書店での取扱いも少し冷たいのではないかという印象を受ける類書をご紹介したいと思います。

会社法新判例 50 (ジュリストブックス)会社法新判例 50 (ジュリストブックス)
(2011/07/27)
弥永 真生

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ご存知、弥永真生先生の判例解説です。
ほぼ時期を同じくして有斐閣さんから出版されているのですが、いくつかのリアル書店をまわってみたところ、都心の大規模書店でも売切れているのか置いていないのか、なかなか見当たりませんでした。
「さすがにここにはないだろう」と思いながら寄ってみた近所の本屋に並んでいて、驚きつつ即買いしました。

さて、上記「会社法施行5年 理論と実務の現状と課題」(長いので以下「ムックのほう」といいます)が、有斐閣のHPをご覧頂けばわかるように、

Ⅰ コーポレート・ガバナンス
Ⅱ 資金調達
Ⅲ M&A,組織再編
Ⅳ 株券電子化と会社法
Ⅴ 会計制度と会社法

と、テーマをいくつかに分けたうえで、25個の裁判例を弁護士や学者の先生方がそれぞれ分担して解説されているのに対し、「会社法 新判例50」(紛らわしいので以下「弥永先生のほう」といいます)は、そのような明確な区分をせず、50個の裁判例の全てを(当然ですが)弥永先生が解説されているところが大きな違いです。


本書は、平成20年7月(1359号)から平成22年にかけて、ジュリストに「会社法判例速報」として連載させていただいたものの中から50件の裁判例を選択し、若干の加筆を加え、とりわけ、その後の帰趨をフォローしたものです。



とはしがきにあるように、「ムックのほう」よりカバーしている期間は2年程度短いものの、そのぶん「おっ!」と思うような裁判例が掲載されていたりします。
この点は「ムックのほう」が、会社法が施行されて5年経ったところで、実務的な視点からここらでいったん振り返ってみよう、というスタンス(だと思う)に対して、「弥永先生のほう」は、淡々と連載されてきたものの中から重要性の高いものをピックアップするというスタンス(だと思う)の違いだと思います。

そのため一見すると、「似たような本が同じ時期に出て、どっちを読もうか迷ってしまいます」ということになってしまうかも知れません。
しかしtacさんの、


世の中を騒がせた会社法関連事件を後からまとめて俯瞰できる文献というのもそうそうなく、そういう意味でも価値ある本



というご指摘のとおり、この5年間の会社法にまつわる事件を総ざらいするには「ムックのほう」が適当かと思います。
しかしながら、「もう少し踏み込んだところまでカバーしたい」「商事法務を読むとワクワクする」というような方には「弥永先生のほう」をお薦めしたいと思います。
とはいえ、そのような方はおそらく両方買うのでしょうね。

ちなみに個人的には、このBlogでも何度か触れていますように、私は弥永先生の切り口が好きなので、「弥永先生のほう」もハズせません。
amazonの解説では物足りないと思いますので、ご興味のある方は有斐閣のHP(コチラ)をご覧ください。
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株式会社ミスミグループ本社のCEOである三枝匡会長(2011年7月時点)は、ボストン・コンサルティング・グループ出身で、「V字回復の経営」などの著書でも有名ですが、今回ご紹介する本の著者である一橋大学大学院教授の沼上幹先生もやはり、株式会社ミスミグループ本社の非常勤取締役を務められています。

経営戦略の思考法経営戦略の思考法
(2009/09/26)
沼上 幹

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この本を読んで最初に感じたのは、「この内容でこの価格は値付けがおかしいのではないか」という、余計なお世話でした。
というのも、1,900円+税で、これだけ充実した内容の本を読めるというのは、ちょっとした驚きだったからです。

さて本書は全体が3部構成になっており、それぞれが割と独立性の高い構成となっていて、どこを読んでも興味深いのですが、どのように分けられているのか、少し長いのですが著者の言葉を引用してみたいと思います。


まず第Ⅰ部では、これまでの経営戦略の考え方について、過去の経営戦略論を振り返り、相互の位置関係を明らかにする作業を展開する。経営戦略論の領域に関して、いわゆる「学説史」を、ややラフにではあるが、それでも全体がある程度見通せるように記述している。
この学説史の整理を通じて、近年の経営戦略論の領域では、時間展開・相互作用・ダイナミクスを解明する思考法が重要であることが指摘される。とりわけ典型的な日本企業に関して言えば、市場での競争的な相互作用とともに、組織内の相互作用まで含んだダイナミックな議論が研究上魅力的な領域であると思われる。このように考えて、この種の「時間展開・相互作用・ダイナミクス」を読み解くための思考法を、まさに思考法そのものに注目して記述するのが第Ⅱ部である。
この思考法を実際に用いて、日本企業にとって意味のあると思われる経営戦略と経営組織の相互作用の問題を議論するのが第Ⅲ部である。顧客・競争・シナジー・選択と集中・組織暴走などを主要なテーマとして議論していく。最後に、実践を積み重ねつつ時々理詰めの座学を学ぶことの意義を主張して本書が締めくくられる。



第Ⅲ部に軽く触れておくと、実際のケースを通じて、「イノベーションのジレンマ」「差別化」「競争回避」「ネットワーク外部性」「シナジー」「選択と集中」「組織暴走」などのテーマについての考察がなされており、読み物としても大変面白いものとなっています。
しかも単純にそれらのテーマがどのようなものであるのか、ということの説明だけに留まらず、その問題点や「ではどうすればその問題点を乗り越えられるのか」といった部分にまで言及されているところが非常に興味深いところです。

第Ⅱ部は「思考法」についての記述ですが、本書のタイトルが「経営戦略の思考法」と付けられていることからも、本書の重要な部分であることが伺われます。
実際には、第Ⅰ部における経営戦略論と第Ⅲ部におけるケースや種々のテーマの橋渡し的な役割を担っているように思います。
一部引用すると、


第Ⅱ部では、経営戦略の思考法、あるいはより広く社会科学の思考法そのものに焦点を当てて解説を加えていくことにしたい。まず第8章では、経営戦略論(社会科学・社会的な言説)に登場する基本的な思考法を3つに分類し、それぞれの特徴を解説する。カテゴリー適用法・要因列挙法・メカニズム解明法という3つの理念型的な思考法を提示し、基本的にはメカニズム解明法が最も妥当な思考法であり、その他の2つはメカニズム解明法的な思考のための準備として、あるいは大規模な組織内で基本方針を伝達するためのコミュニケーションの型としての効用があることが指摘される。



個人的には、メカニズム解明法と名づけられた思考法も、その前提としていわゆる「クリティカルシンキング」と呼ばれる、ものごとの捉え方や考え方が必要とだと思うので、過去にも何度かお薦めしている「クリティカルシンキング (入門篇)」はやはり読んでおくべき一冊だな、と再確認しました。


さて、何だかんだ言っていますが、私にとって最も興味深かったのは第Ⅰ部です。
ここでは既存の経営戦略論を大きく5つに分類し、それぞれについて詳細な説明がなされています。
本書でも言及されていますが、ヘンリー・ミンツバーグの「戦略サファリ―戦略マネジメント・ガイドブック」では、これらの経営戦略論が10個に分類されていたのですが、本書はさらにそれを5つにまで「ざっくりと」分類しています。
具体的には以下の5つ。

1.戦略計画学派
2.創発戦略学派
3.ポジショニング・ビュー
4.リソース・ベースト・ビュー
5.ゲーム論的アプローチ

そして上記の5つに戦略論を分類したうえで、本書のサブタイトルにもある「時間展開・相互作用・ダイナミクス」という視点から、再度それらを整理し直しています。
この点に関する説明を引用したいと思います。


学説の整理を行う際に、基本的には5つの経営戦略観に分類して議論を進めていく。すなわち、①アンソフに代表される戦略計画学派、②ミンツバーグに代表される創発戦略学派、③ポーターに代表されるポジショニング・ビュー、④バーニーやプラハラードとハメル、伊丹に代表されるリソース・ベースト・ビュー、⑤ブランデンバーガーとネイルバフに代表されるゲーム論的アプローチの5つである。
これら5つの戦略観を代表する人々の業績を中心に紹介しながら、経営戦略論に出現する主要な概念を解説した上で、それら相互の関係について3つの次元を用いて整理を行う。3つの次元とは、①事前の合理的設計重視VS事後の創発重視、②市場ポジションの重視VS経営資源の重視、③安定的構造重視VS時間展開・相互作用・ダイナミクス重視である。



ご覧頂けばおわかりになるとおり、経営戦略をざっくりと理解するにはほどよい分類方法なのではないかと思います。
そしてこの分類は、おおまかに1960年代からの経営戦略論を時系列に沿って理解するうえでも有効なように思います。
具体的には1965年以降の戦略計画学派、そのアンチテーゼとして1973年頃登場した創発戦略学派、そして1980年のポーターを中心とするポジショニング・ビュー、1984年頃からのリソース・ベースト・ビュー、そして1996年あたりから本格的に論じられるようになったゲーム論的アプローチ。
この一連の流れを読むと、何だかこう、すっきりと頭の中が整理された気がします。


以上、本書からいくつかの箇所を引用しつつご紹介してきましたが、「お薦めですよ~」というくらいしか、私ごときが言えることはありません。
ただ1点、法務担当者の視点として興味深かったのが、ゲーム論的アプローチについて書かれている第Ⅱ部6章のうち、「取引条件の分析」なるところ。


ゲーム論的なアプローチは、ゲームのルールなどが明確になる場面で有効性を発揮するので、具体的な取引契約の分析などに興味深い知見を生み出している。



として、ラスト・ルック条項(last-look clause)、競争対応条項(meet-the-competition clause)、また、ベスト・プライス条項(best-price clause)、最優遇条項(most-favored-customer clause)といった契約条項についての具体的な事例が述べられています。

引用すると長くなるのでやめておきますが、メーカーの法務担当者の方などにとっては参考になる考え方なのではないでしょうか。
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一年前にご紹介したMotorolaのヘッドセット
Bluetooth で音楽を聴く快適さを一度味わってしまった私はもう、iPhoneにコードを挿したり、iPhoneにコードをグルグル巻きつけたりという無粋なことはできなくなってしまいました。

そしてこの一年の間に、私が愛用していたiPod touchはiPhoneに代わりましたが、Motorolaのヘッドセットは相変わらずのお気に入りでした。
しかしやはり少々かさばることと、ボリュームを上げると音漏れがすることが少しばかり気になっていました。
特に、音楽を聴いているときには気をつけてさえいれば音漏れをすることもないのですが、音楽を聴いている最中に電話が鳴ると、カランコロンコロンカランというiPhoneの着信音がヘッドセットから予想以上に大きな音で出るので、電車内の方々などが「ん?何の音だ?」という顔をして私を見るのですね。
そんなこんなで、「やっぱり耳に挿すタイプがいいな」と思い始め、Bluetoothイヤホンを先日来物色していました。

そしていくつかの商品を見比べたうえで購入したのがこれ。

audio-technica ワイヤレスステレオヘッドセット ブラックレッド ATH-BT03 BRDaudio-technica ワイヤレスステレオヘッドセット ブラックレッド ATH-BT03 BRD
(2010/08/06)
オーディオテクニカ

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いやはや、いいですねこれは。
まず何といっても耳に挿すので、少々ボリュームを上げてもそうそう音漏れしません。もちろんカランコロンコロンカランが鳴ったときも、誰も私の顔を見たりしません。
そしてやはり音がいい。そう音にこだわるわけでもない私ですが、そりゃあ音はいいにこしたことはありません。HR/HM などのギターソロは、やっぱりいい音で聴きたいですね。
さらに色がいい。ブラックやブルーという選択肢もあったのですが、私が選んだのは本体がブラックでコードが赤という情熱のACミラン カラー。否が応でも気分が盛り上がります。
そしてMotorola さんとの最大の違い。それはiPhoneを触らずして電話もできてしまうところですね。まぁこれは特に目新しいものでもないかも知れませんが、電話がかかってきたときにイヤホン本体のボタンを押せば通話ができます。イヤホン本体にはマイクもついているので、iPhoneはポケットやカバンの中にしまったままの状態で、通話することができるのです。

もうここまできたら、買わない理由が見当たらないでしょう。

あえて難点を挙げるとすれば、amazonのレビューなどでも触れられていますが、コードが少々長いこと。しかしこれは「ちょっと長いかな」という程度のもの(もちろん感覚に個人差はあります)なので、私にとってはそう気になるものでもありませんでした。
もう一つ難点を挙げると、USB充電がデフォルトであること。これは別売りのUSB対応ACアダプターを買えば解消するのですが、私の場合はMotorolaのヘッドセットに付いていたUSB対応ACアダプターで代用できてしまいました。

そのようなわけで、少しばかり使ってみて「これはいいなあ」と感心している次第です。
そうそう、イヤホンの本体にはクリップがついているので、胸ポケットがない服を着ている方でも無問題です。
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