風にころがる企業ホーマー

企業法務や経営に関する話題を中心に、気ままに情報発信してます。

2011/05

前回のエントリーの続きです。
更新しないときは完全に放置し、更新するとなると鬱陶しいくらい更新する気まぐれブログですみません。


さて前回は、
「東京都暴力団排除条例」は決して他人事ではなく、あなたの会社にも影響があるのですよ!
というところで終わっていました。
今回はその続き、ではどう影響があるのか、という点について触れたうえで、遠慮がちな提案の一つでもしてみたいと思います。

まず、東京都暴力団排除条例についてお話する前提として、各都道府県の取組みについて少しだけ触れておく必要があるのではないかと思います。
全国的にはじめて、条例レベルで総合的な暴力団排除を明確に打ち出したものは、「福岡県暴力団排除条例」で、2010年4月1日から既に施行されています。
ちなみに私は福岡出身なのですが、昔は「外車を見たらそのスジの人と思え」と教わったり、高校生の頃には通学途中の同級生が事務所(もちろん弁護士事務所などではありません)に連れて行かれたり、ということを見聞きしていたので、福岡県がいち早く対応したことに、「さもありなん」と思いつつも、少々複雑な心境でもありました。

そして現在、「NBL952号」によれば、2011年4月1日時点において、暴排条例が制定されている都道府県は46、施行されている都道府県は30にのぼるとのことです。
すなわち、東京に本社がある会社であっても、全国規模で活動されている会社であれば、それぞれの都道府県の暴排条例についてケアしておく必要があるということにもなります。
というのも、現在各都道府県で公布・施行されている暴排条例は、概ね福岡県暴排条例と同様の構成となっているということであり、その特徴として、暴力団などの反社会的勢力だけでなく、事業者も規制の対象となっているところに特徴があるからです。

しかしそうはいっても、全ての都道府県の暴排条例を調べてそれぞれに対応策を講じるというのは現実的ではないでしょう。
そこで例えば、東京に本社を置いているような企業であれば、少なくとも東京都暴排条例についてはじっくりと検討し、契約書にいわゆる暴排条項を盛り込むなどして、反社会的勢力との関わりをもたない、またうっかり関わってしまった場合には速やかに関係を断ち切るということを考える必要があるのではないでしょうか。

具体的に東京都暴排条例の条文を採り上げてみますと、「第3章 都民等の役割」には、以下のようなことが規定されています。


第18条 事業者は、その行う事業に係る契約が暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる疑いがあると認める場合には、当該事業に係る契約の相手方、代理又は媒介する者その他の関係者が暴力団関係者でないことを確認するよう努めるものとする。
2.事業者は、その行う事業に係る契約を書面により締結する場合には、次に掲げる内容の特約を契約書その他の書面に定めるよう努めるものとする。
一 当該事業に係る契約の相手方又は代理若しくは媒介をする者が暴力団関係者であることが判明した場合には、当該事業者は催告することなく当該事業に係る契約を解除することができること。
(2号以下省略)


つまり誤解を恐れず単純にいえば、いわゆる「反社チェック」を行ったうえで、契約書には暴排条項を盛り込みましょうね、という努力義務を企業が負うこととなっているのです。

そして「第5章 違反者に対する措置等」においては、以下のような規定が設けられています。説明がわかり易いのでNBLから引用します。


(略)暴力団と知らずに取引を開始してしまい、関係遮断をしたいが踏み切れていない者については、自主的な関係遮断に向けた手続となっている。すなわち、利益供与の事実を自主申告し、関係遮断を警察に誓約すれば勧告をされず、警察等による助言・指導や保護措置がなされるが、このような適用除外に当たらなければ公安委員会による勧告がなされ、これにさらに違反した場合には公表されることになる(略)


※強調部分は管理人によるものです

つまり、うっかり取引をしてしまった場合には罰則こそないものの、場合によっては企業名が公表されてしまうという、レピュテーショナルリスクが存在するわけで、これは企業にとって大きな問題となり得ます。

さらにいえば、蛇の目ミシン事件最高裁判決以降のコンプライアンス、内部統制に関する議論の流れから考えても、上記のような
      反社チェック → 暴排条項
という対応すらしていなかった場合には、取締役の忠実義務、善管注意義務違反を問われる可能性は以前にも増して高くなってきているものと考えるべきでしょう。

以上のようなことから、企業法務担当者の皆さんとしては、「反社チェックと暴排条項」、これだけは忘れずに対応していく必要があるのではないかと考えているわけです。
なお、暴排条項のテクニカルな部分に関しては、以前に何度か紹介していますので、ここでは割愛したいと思います。ご興味のある方は、前回のエントリーから辿って頂ければと思います。
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東京都暴力団排除条例が、2011年10月1日から施行されます。

このBlogでは過去に何度か、いわゆる「暴排条項」について書いてきました。
取引の相手方が暴力団関係者だった場合には契約を解除できる、というようなことを契約書に盛り込むアレですね。

(参考)
・「暴力団排除条項について考えてみた」シリーズ
・「反社会的勢力対応のいま -金融法務事情1901号より」

昨年4月頃から金融機関が、銀行取引約定書や普通預金規定などに暴排条項を盛り込むケースが増えてきているようですが、特に後者については導入時にいろいろと苦労があったという話を聞いています。
さらには全国銀行協会暴排条項の参考例を公表するなどしており、いよいよ暴排条項に対する認識が高まってきている状況ではないかと思います。

さてそのような中で、「東京都暴力団排除条例」が公布され、今年の10月から施行されることとなったわけです。
田中克幸弁護士、鈴木仁史弁護士、清水保晴弁護士による、この条例に関する詳細な解説が、NBL952号に掲載されていて、これがまた非常にわかりやすいので、法務担当者の皆さんには目を通しておくことをお勧めします。

話は少し逸れますが、私の個人的な感覚からいって、かなりの大企業さんから契約書案を提示された場合であっても、暴排条項が盛り込まれていることは、現時点では1~2割程度のように感じています。
金融関係の方々は割と早くから対応をされていて、既に何らかの契約書を取り交わしている取引先との間でも、「反社会的勢力と関係がないことの覚書」などをあらためて取り交わすケースが見受けられますが、その他の業界ではまだまだこのあたりの認識がそう高くないように思っています。

しかし今回の「東京都暴力団排除条例」は、
あなたの会社にも影響があるのですよ!
ということをお伝えしたいと思います。

しかし今日はここでタイムアップ。
続きはまた近日中に書きたいと思います。
(感じの悪いバラエティ番組のような終り方ですみません)
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今にはじまったことではないのですが、「企業法務マンサバイバル」の tac さんなどから、

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ところで暴排といえば先日証券会社の約款でヘンな暴排条項見つけたのでいつかブログでネタにします。マル暴として高名なひろさんのご指導も賜りたく。


などと、反社会的勢力問題に関して「高名」な人であるかのように、すっかりおちょくられてしまっている私ですが、実は案外と会社法が好きだったりもします。
正確に言うと、「必要に迫られて調べたり対応したりしているうちにすっかり面白くなってしまった」というのが正確な表現のように思います。


過去にも何度か、会社法に関する渾身のエントリーを書いていて(渾身ではありますが、たいした内容ではありません)、それはそれで今でも訪問して下さる方の多いエントリーとなっています。
そして今回もまた、必要に迫られてGW返上で調べ物をしているわけです。

何を調べているかを現時点でここに書くことはできないのですが、いずれさりげなくまとめてUPしておきたいと思っています。
おそらく同様のことで頭を悩ませている方もいらっしゃるものと思いますので、何かのお役に立つのではないかと思っています。


さて、何を調べているかを書かないくせに、なぜ今ここに駄文を書いているかというと、会社法に関する書籍についてちょっと思うところなどを書いてみたくなったからです。

少し大きな本屋に行くと、「会社法○○」「○○会社法」といった分厚い本がたくさん並んでいて、どれを買えばいいのか悩んでしまうこともあるかも知れません。
私はそれらを全て読んだわけでもないので、ここで紹介させて頂くのは、本来であれば紹介するまでもない「定番」になってしまっていますが、まあいいではないですか。
所詮は素人の戯言ですので、「おいおい、それは違うぞ」とか「こっちの方がいいぞ」とか、色々なご意見もあるかと思いますが、そのようなときはコメント欄から優しくご指摘下さい。

もちろん「この本、最高なんだよね」というご紹介など頂けると、大変嬉しいです。


さて、まずは会社法に関わる仕事をされている方であればたいてい持っているであろうこの一冊。
株式会社法 第3版株式会社法 第3版
(2009/12/21)
江頭 憲治郎

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私が最も好きな芸人さんは江頭2:50さんなのですが、それとこれとは何の関係もありません。
やはりいつも手許に置いておきたい一冊です。
900ページの大部で、会社に持って行ったり持って帰ったりするのはツライので、家と会社に一冊ずつ置いてあります。
そして何か疑問があるときにまず開く一冊です。
この本のことを「エガちゃん」と呼んでいる失礼な法務担当者は、一人や二人でないと思います。
それほど身近な一冊であるとも言えるでしょう(!?)

次にご紹介するのはこれ。
リーガルマインド会社法 第12版リーガルマインド会社法 第12版
(2009/11/30)
弥永 真生

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弥永先生ですね。
この一冊は、他の書籍に当たってみて、「載ってないなあ・・・」などと呟きながら開いたとき、欲しかった情報がズバリ載っていたりする、不思議な一冊だと私は感じています。
しかもそのような情報はたいてい脚注に載っています。
試しにページをパラパラめくってみて下さい。
脚注のほうが本文よりも幅を利かせているページが目につくことも少なくありません。
そう厚い一冊でもないのですが、法律と会計の世界を自由に行き来される弥永先生の視点は、個人的にとても興味をもっているところです。


会社法入門 第12版会社法入門 第12版
(2009/12/12)
前田 庸

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この一冊も完全に定番だと思いますが、どんどん分厚くなっていく気がしています。気のせいでしょうか。


以上が「とりあえず調べる」というとき、私が最初にパラパラと目を通すお気に入りたちです。ほかにもいくつかありますが、これらに目を通すことでたいていの場合は「なるほどね」と気持ちが落ち着きます。
もちろん特定の分野に徹底して突っ込む必要があるときには、その分野の書籍に当たったり、さらにその書籍の参考文献に遡ったりということをしています。

「弁護士に相談した方が早くね?」という向きもあろうかと思いますが、どうしても自分で調べておく必要がある状況というものが世の中にあることは、何となくご理解頂けるのではないかと思います。
あえてここでは詳しく書きませんが。

さてさらに、当然といえば当然ですが、
会社法コンメンタール〈1〉総則・設立(1)会社法コンメンタール〈1〉総則・設立(1)
(2008/03)
江頭 憲治郎

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このシリーズはやはりとても頼りになります。
そりゃ、コンメンタールですから詳しいですよね。
とはいえ、シリーズを全部揃えていたら、いったいいくらかかるかわかりませんし、私は学者さんや弁護士ではないので、その必要もありません。
どうしても必要だったり、欲しい分野に絞ったりして買うことにしています。


そして今回買ったのがこの一冊。
会社法実務ハンドブック会社法実務ハンドブック
(2010/06)
高野 一郎

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分厚い・・・
1,400ページほどあります。
しかし今回の調べ物に関して、ここまで詳しく、しかもわかり易く書かれている書籍が他に見当たらなかったので、迷わず購入しました。
体重計で量ってみようと思っていてすっかり忘れていましたが、部屋にあるダンベルと持ち比べてみたところ、どうも3.5キロくらいはありそうです。

この一冊、「実務ハンドブック」というだけあって、一般論に留まらず、具体的に実務上どう対応すべきかまで述べられているところがお役立ち。これから末永いお付き合いをさせて頂く一冊となりそうです。



さてさて、これらはどれも「通読」するような代物ではなく、よほど苦行が好きな方でない限り、企業法務担当者で通読される方は、まあまずいらっしゃらないのではないかと思います。
「では通読できて、会社法の全体像がわかるのはどんな本だ?」
と問われれば、以下のようなものをお薦めしたいと思います。
会社法要説会社法要説
(2010/12/20)
落合 誠一

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この落合先生の薄い一冊は200ページ程度しかありません。


さらには、
会社法 第2版 (LEGAL QUEST)会社法 第2版 (LEGAL QUEST)
(2011/03/25)
伊藤 靖史、大杉 謙一 他

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ご存知、伊藤先生と大杉先生の通称「リークエ」ですね。
この一冊を一気に読んでおけば、会社法の全体像をある程度の深さをもって知ることができるのではないかと思います。
ちなみに最近第2版が出ています。


「会社法を勉強したいけど、どれも難しそうだなあ・・・」と、1,200円くらいで「サルでもわかる」系の本を次から次に買われる方を何人か見てきましたが、やはり一度はある程度「骨のある一冊」をきっちり読んでおく必要があると思っています。
これはもちろん会社法に限ったことではないのですが、少なくとも会社法に関しては最後にご紹介した2冊あたりをお薦めしたいと思います。

あと、図表が好きな方であれば、
会社法マスター115講座会社法マスター115講座
(2009/04)
不明

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この一冊もいいかも知れません。
左ページが文章で、右ページが図表というスタイルが徹底されています。



--------------(6月4日追記)
本エントリーには Twitter でも多くのコメントを頂いたのですが、「この本を忘れちゃ困る!」といわんばかりの勢いで、いろいろな方からお薦め頂いたのが、この一冊。

アドバンス 新会社法アドバンス 新会社法
(2010/09)
長島大野常松法律事務所

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長島・大野・常松法律事務所の本だけあってとても実践的な内容なので、私もよく参考にさせて頂いています。
お値段は張りますが、手許にあると心強い一冊であることは間違いありません。
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