風にころがる企業ホーマー

企業法務や経営に関することについて、情報発信していきまーす!

株式会社ミスミグループ本社のCEOである三枝匡会長(2011年7月時点)は、ボストン・コンサルティング・グループ出身で、「V字回復の経営」などの著書でも有名ですが、今回ご紹介する本の著者である一橋大学大学院教授の沼上幹先生もやはり、株式会社ミスミグループ本社の非常勤取締役を務められています。

経営戦略の思考法経営戦略の思考法
(2009/09/26)
沼上 幹

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この本を読んで最初に感じたのは、「この内容でこの価格は値付けがおかしいのではないか」という、余計なお世話でした。
というのも、1,900円+税で、これだけ充実した内容の本を読めるというのは、ちょっとした驚きだったからです。

さて本書は全体が3部構成になっており、それぞれが割と独立性の高い構成となっていて、どこを読んでも興味深いのですが、どのように分けられているのか、少し長いのですが著者の言葉を引用してみたいと思います。


まず第Ⅰ部では、これまでの経営戦略の考え方について、過去の経営戦略論を振り返り、相互の位置関係を明らかにする作業を展開する。経営戦略論の領域に関して、いわゆる「学説史」を、ややラフにではあるが、それでも全体がある程度見通せるように記述している。
この学説史の整理を通じて、近年の経営戦略論の領域では、時間展開・相互作用・ダイナミクスを解明する思考法が重要であることが指摘される。とりわけ典型的な日本企業に関して言えば、市場での競争的な相互作用とともに、組織内の相互作用まで含んだダイナミックな議論が研究上魅力的な領域であると思われる。このように考えて、この種の「時間展開・相互作用・ダイナミクス」を読み解くための思考法を、まさに思考法そのものに注目して記述するのが第Ⅱ部である。
この思考法を実際に用いて、日本企業にとって意味のあると思われる経営戦略と経営組織の相互作用の問題を議論するのが第Ⅲ部である。顧客・競争・シナジー・選択と集中・組織暴走などを主要なテーマとして議論していく。最後に、実践を積み重ねつつ時々理詰めの座学を学ぶことの意義を主張して本書が締めくくられる。



第Ⅲ部に軽く触れておくと、実際のケースを通じて、「イノベーションのジレンマ」「差別化」「競争回避」「ネットワーク外部性」「シナジー」「選択と集中」「組織暴走」などのテーマについての考察がなされており、読み物としても大変面白いものとなっています。
しかも単純にそれらのテーマがどのようなものであるのか、ということの説明だけに留まらず、その問題点や「ではどうすればその問題点を乗り越えられるのか」といった部分にまで言及されているところが非常に興味深いところです。

第Ⅱ部は「思考法」についての記述ですが、本書のタイトルが「経営戦略の思考法」と付けられていることからも、本書の重要な部分であることが伺われます。
実際には、第Ⅰ部における経営戦略論と第Ⅲ部におけるケースや種々のテーマの橋渡し的な役割を担っているように思います。
一部引用すると、


第Ⅱ部では、経営戦略の思考法、あるいはより広く社会科学の思考法そのものに焦点を当てて解説を加えていくことにしたい。まず第8章では、経営戦略論(社会科学・社会的な言説)に登場する基本的な思考法を3つに分類し、それぞれの特徴を解説する。カテゴリー適用法・要因列挙法・メカニズム解明法という3つの理念型的な思考法を提示し、基本的にはメカニズム解明法が最も妥当な思考法であり、その他の2つはメカニズム解明法的な思考のための準備として、あるいは大規模な組織内で基本方針を伝達するためのコミュニケーションの型としての効用があることが指摘される。



個人的には、メカニズム解明法と名づけられた思考法も、その前提としていわゆる「クリティカルシンキング」と呼ばれる、ものごとの捉え方や考え方が必要とだと思うので、過去にも何度かお薦めしている「クリティカルシンキング (入門篇)」はやはり読んでおくべき一冊だな、と再確認しました。


さて、何だかんだ言っていますが、私にとって最も興味深かったのは第Ⅰ部です。
ここでは既存の経営戦略論を大きく5つに分類し、それぞれについて詳細な説明がなされています。
本書でも言及されていますが、ヘンリー・ミンツバーグの「戦略サファリ―戦略マネジメント・ガイドブック」では、これらの経営戦略論が10個に分類されていたのですが、本書はさらにそれを5つにまで「ざっくりと」分類しています。
具体的には以下の5つ。

1.戦略計画学派
2.創発戦略学派
3.ポジショニング・ビュー
4.リソース・ベースト・ビュー
5.ゲーム論的アプローチ

そして上記の5つに戦略論を分類したうえで、本書のサブタイトルにもある「時間展開・相互作用・ダイナミクス」という視点から、再度それらを整理し直しています。
この点に関する説明を引用したいと思います。


学説の整理を行う際に、基本的には5つの経営戦略観に分類して議論を進めていく。すなわち、①アンソフに代表される戦略計画学派、②ミンツバーグに代表される創発戦略学派、③ポーターに代表されるポジショニング・ビュー、④バーニーやプラハラードとハメル、伊丹に代表されるリソース・ベースト・ビュー、⑤ブランデンバーガーとネイルバフに代表されるゲーム論的アプローチの5つである。
これら5つの戦略観を代表する人々の業績を中心に紹介しながら、経営戦略論に出現する主要な概念を解説した上で、それら相互の関係について3つの次元を用いて整理を行う。3つの次元とは、①事前の合理的設計重視VS事後の創発重視、②市場ポジションの重視VS経営資源の重視、③安定的構造重視VS時間展開・相互作用・ダイナミクス重視である。



ご覧頂けばおわかりになるとおり、経営戦略をざっくりと理解するにはほどよい分類方法なのではないかと思います。
そしてこの分類は、おおまかに1960年代からの経営戦略論を時系列に沿って理解するうえでも有効なように思います。
具体的には1965年以降の戦略計画学派、そのアンチテーゼとして1973年頃登場した創発戦略学派、そして1980年のポーターを中心とするポジショニング・ビュー、1984年頃からのリソース・ベースト・ビュー、そして1996年あたりから本格的に論じられるようになったゲーム論的アプローチ。
この一連の流れを読むと、何だかこう、すっきりと頭の中が整理された気がします。


以上、本書からいくつかの箇所を引用しつつご紹介してきましたが、「お薦めですよ~」というくらいしか、私ごときが言えることはありません。
ただ1点、法務担当者の視点として興味深かったのが、ゲーム論的アプローチについて書かれている第Ⅱ部6章のうち、「取引条件の分析」なるところ。


ゲーム論的なアプローチは、ゲームのルールなどが明確になる場面で有効性を発揮するので、具体的な取引契約の分析などに興味深い知見を生み出している。



として、ラスト・ルック条項(last-look clause)、競争対応条項(meet-the-competition clause)、また、ベスト・プライス条項(best-price clause)、最優遇条項(most-favored-customer clause)といった契約条項についての具体的な事例が述べられています。

引用すると長くなるのでやめておきますが、メーカーの法務担当者の方などにとっては参考になる考え方なのではないでしょうか。
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一年前にご紹介したMotorolaのヘッドセット
Bluetooth で音楽を聴く快適さを一度味わってしまった私はもう、iPhoneにコードを挿したり、iPhoneにコードをグルグル巻きつけたりという無粋なことはできなくなってしまいました。

そしてこの一年の間に、私が愛用していたiPod touchはiPhoneに代わりましたが、Motorolaのヘッドセットは相変わらずのお気に入りでした。
しかしやはり少々かさばることと、ボリュームを上げると音漏れがすることが少しばかり気になっていました。
特に、音楽を聴いているときには気をつけてさえいれば音漏れをすることもないのですが、音楽を聴いている最中に電話が鳴ると、カランコロンコロンカランというiPhoneの着信音がヘッドセットから予想以上に大きな音で出るので、電車内の方々などが「ん?何の音だ?」という顔をして私を見るのですね。
そんなこんなで、「やっぱり耳に挿すタイプがいいな」と思い始め、Bluetoothイヤホンを先日来物色していました。

そしていくつかの商品を見比べたうえで購入したのがこれ。

audio-technica ワイヤレスステレオヘッドセット ブラックレッド ATH-BT03 BRDaudio-technica ワイヤレスステレオヘッドセット ブラックレッド ATH-BT03 BRD
(2010/08/06)
オーディオテクニカ

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いやはや、いいですねこれは。
まず何といっても耳に挿すので、少々ボリュームを上げてもそうそう音漏れしません。もちろんカランコロンコロンカランが鳴ったときも、誰も私の顔を見たりしません。
そしてやはり音がいい。そう音にこだわるわけでもない私ですが、そりゃあ音はいいにこしたことはありません。HR/HM などのギターソロは、やっぱりいい音で聴きたいですね。
さらに色がいい。ブラックやブルーという選択肢もあったのですが、私が選んだのは本体がブラックでコードが赤という情熱のACミラン カラー。否が応でも気分が盛り上がります。
そしてMotorola さんとの最大の違い。それはiPhoneを触らずして電話もできてしまうところですね。まぁこれは特に目新しいものでもないかも知れませんが、電話がかかってきたときにイヤホン本体のボタンを押せば通話ができます。イヤホン本体にはマイクもついているので、iPhoneはポケットやカバンの中にしまったままの状態で、通話することができるのです。

もうここまできたら、買わない理由が見当たらないでしょう。

あえて難点を挙げるとすれば、amazonのレビューなどでも触れられていますが、コードが少々長いこと。しかしこれは「ちょっと長いかな」という程度のもの(もちろん感覚に個人差はあります)なので、私にとってはそう気になるものでもありませんでした。
もう一つ難点を挙げると、USB充電がデフォルトであること。これは別売りのUSB対応ACアダプターを買えば解消するのですが、私の場合はMotorolaのヘッドセットに付いていたUSB対応ACアダプターで代用できてしまいました。

そのようなわけで、少しばかり使ってみて「これはいいなあ」と感心している次第です。
そうそう、イヤホンの本体にはクリップがついているので、胸ポケットがない服を着ている方でも無問題です。
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D1-Law nano 判例20000 2011 Edition (重要判例20,000件超を収録したUSBメモリー!)D1-Law nano 判例20000 2011 Edition (重要判例20,000件超を収録したUSBメモリー!)
(2011/04/01)
不明

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何ともありがたいことに、この商品を第一法規さんから頂きました。
第一法規の皆様にはこの場を借りてお礼申しあげます。ありがとうございます。

さて既に、この商品については「企業法務マンサバイバル」のtacさんや、「dtk's blog」のdtkさんなどが詳しく紹介されているので、私ごときがコメントする意味はあまりないようにも思いますが、あえてそのようなことはお構いなしで感想など書いてみたいと思います。


そもそもこのUSB判例データベース、2010年に発売されたときに、私は個人的に購入しようかどうか迷っていました。
というのも、ASP型の判例データベースを提供されている会社はいくつかありますが、いずれもいかんせん"高い"というのが正直な感想。
弁護士事務所や学者さんであれば、コストに見合うだけの利用をされるのかも知れませんが、私のように小規模な法務部門で働く人間がそこまでバンバン使うこともないだろうと考え、判例データベースの導入は見送っていました。

そのような経緯もあり、判例データベースについては裁判所の判例検索システムを必要であれば利用するという程度に留めていたわけです。
さてそんな折、USBの判例データベースが第一法規さんから発売されたことを知って、「これなら自腹で買ってもいいかな」と考えていたわけです。
しかしそうはいっても21,000円します。
買ってみてから「使えないなあ」と簡単に放り出すには少々痛い金額です。
また「重要判例20,000件超を収録」と言われても、20,000件がどの程度のものなのか、つまり実務上裁判例にあたってみるときに事足りる件数なのかどうか、今ひとつピンときませんでした。
そしてそうこうしているうちに、2011年版が発売されたわけです。


ところで少し話は変わりますが、「経営戦略―論理性・創造性・社会性の追求」 という本に、以下のような一節があります。


ベンチャー企業の特徴は、その成長過程において、リスクを冒しながら、なおかつそのリスクを減少させようとするという「リスク・パラドックス」に常に直面していることである。そのリスクをいかにマネジメントしていくのかは、ベンチャー企業の成長にとって本質的な問題と言える。



決してベンチャー企業だけに限られる話ではないでしょうが、全く新しい事業や取組みを行うにあたり、この、「リスク・パラドックス」は、個人的にまさしく日々直面している問題でもあります。
そしてそのような事業や取組みのスキームを作る段階から、法令違反がないか、或いはどのような手当てをしておく必要があるかなど、いろいろな文献にあたって調べることが、案外日常的にあります。
もちろんそのようなときには顧問弁護士の意見を聞いたりもするのですが、保守的な回答しか得られないこともよくあります。
特に多いのが、「このようなリスクがあるのでこのような対応をしておくことが望ましい」というような回答。そしてその、「このような対応」をした方が安全なのはわかるけど、それができないから頭を使っているのです、という状況になることも珍しくありません。
そんなとき、「この本にこんなことが書いてある」とか「こんな裁判例がある」ということを調べたうえで、スキームを検討し直して再度相談したり、関係するお役所に問題ないかを確認に行ったりする、ということもあります。


だいぶ話が逸れてしまいましたが、時間とお金がふんだんにあるわけでもないベンチャー企業の法務担当者にとって、毎月チャリンチャリンとお金を払う方式ではなく、USBメモリーに入ったデータをバサッと買い取ってしまうこの商品は、非常に魅力的に見えたわけです。
(あとまあやはり個人的にも、「どんなもんじゃろか!?」と、興味は湧きますよね)

ちなみにこの商品の詳細は、本家のHPに記載されていますので、スペックなどの概要はそちらをご覧頂いたほうが早いかと思います。

さて何だかウダウダと書いてきましたが、結局私たち法務担当者にとって一番の問題は、
本当に使えるのか?
という一点にかかってくるものと思います。

そしてこればかりは実際に使ってみないことには、何とも言えないところですが、幸い第一法規さんから頂戴したおかげで、実際に使ってみることができました。

感想。
これ、とてもいいです。

何といっても検索性がいい。
ネット環境がなくても、そしてもちろん回線速度などに関わりなく、ズバっと一瞬で「検索ワード」に関連する裁判例が表示されます。
そして「20,000件ってどうなの!?」という不安もすぐに打ち消されます。最高裁判例はもちろん、下級審の裁判例についても結構な数がヒットしますから。
当然、あらゆる裁判例が網羅されているわけではありませんが、企業法務担当者として「欲しいレベル」は軽々と超えているのではないでしょうか。

例えば「株価」などというテキトーな言葉で検索してみると、以下のように210件がヒットします。

46fbc85a.jpg


検索結果にはもちろん、ここ数年話題となった、レックス・ホールディングス社、サイバードホールディングス社、サンスター社などの価格決定申立て事件に関する、地裁・高裁・最高裁の決定なども表示されています。

そこで試しにサンスター社の価格決定申立て事件の要旨を見てみましょう。

8f68c64e.jpg


キャプチャーでは若干見づらいかも知れませんが、決定の要旨だけでなく、裁判官の名前やこの決定に関する評釈が掲載された雑誌の号数などまで表示されます。
そして画面右端にはこの決定に関係する法令(ここでは会社法第172条)が表示され、ここをクリックするとtacさんが「芋づる式」と表現されているとおり、この規定に関連する裁判例をズラズラと引きずり出すことができます。
この「芋づる」は、非公開会社の価格決定申立て事件など、ややマニア心をくすぐられるものにもつながっているので、「ほほう」などとつぶやきながら、楽しく読んでしまったりします。

さていよいよ本文を見てみましょう。
スクリーンショットの赤で囲った部分をクリックすると、本文が表示されます。

fff402d2.jpg


そしてさらに、「解説」をクリック。

edf2652a.jpg


なんと判例タイムズ社の解説を読むことができます。
この、判例タイムズの解説は全ての裁判例等についているわけではありませんが、第一法規さんが「最重要判例」と判断したものにはついているとのことです。
私がちょっと見てみた限りでは、収録されている解説の件数や割合はわかりませんでしたが、感覚としては「結構掲載されているなあ」という印象を受けました。とはいえ、この印象には当然個人差もあるでしょうから、おまけ程度に考えていたほうがいいかも知れません。


「興味はあるけど使えるものなのかどうか不安だ」という方も結構いらっしゃるものと個人的にニラんでいるこの商品。
理想をいえば一度試しに使って確認したいところだと思いますが、私としては「買って損はない」というか、「是非持っていたい」と感じました。
実際、いつも持ち歩いているPCのインナーケースには、この商品を入れています。

ただ「会社のセキュリティ上USBはノー」という方や、「もっとお手軽に調べたいんじゃ」などという方のためにも、スマホやタブレット向けのアプリとして発売されると歓迎されるのではないかとも思います。

以上、思いつくまま気の向くまま、感想をツラツラと書いてみました。
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法務担当者のためのもう一度学ぶ民法(契約編)法務担当者のためのもう一度学ぶ民法(契約編)
(2009/09)
田路 至弘

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「いまさら紹介してどうすんの?」
という声が聞こえてきそうですが、「いいものはいい」ので、今さらと言われようがきっちり紹介させて頂きます。
田路先生の「民法再入門の本」です。

「企業法務について」の kata さんが、2年近く前のエントリーで、
"法務に配属されたら何をおいても最初に読むべき一冊"
と紹介されていたことをご記憶の方もいらっっしゃるかと思います。

そしてご記憶の方は奇特な方であると認定させて頂きたいのですが、「民法の入門書として最適な一冊選手権」暫定チャンピオンというエントリーで、やはり2年ほど前に私も、以下のように本書について少し触れていました。


「企業法務について」のkataさんを初め、数々の法務系ブロガーに絶賛されている、「法務担当者のためのもう一度学ぶ民法(契約編)」が鳴り物入りでどーんと現れたのですが、僕はまだ読んでいないので、残念ながらコメントできません。
   (中略)
(「民法概説」を)民法入門書のチャンピオンに認定したいところですが、上記「法務担当者のためのもう一度学ぶ民法(契約編)」の評判があまりによいので、そことの決着がつくまでは「暫定チャンピオン」ということにしておきます。
この戦いについては、いずれケリをつけたいと思います。



というわけで、2年越しでケリをつけるときがきました。
実はこの田路(とうじ)先生の本は発売当時(シャレではありません)、買っていたのですが、なかなか目を通す機会がありませんでした。
しかし今年に入ってからわが法務部門に2名の新人さんが加入したため、「ここらできっちり読んでおいて、本当によかったら新人さんにプレゼントしよう」と考えたわけです。

そして今回一読し、迷わずプレゼントすることに決定しました。
ただ、新人さんのうちの一人は他社での法務経験があり、本書も既に読んでいたということが発覚したので、他部署から異動してきた1名様に1冊プレゼントすることにしました。

ちなみにもはや今さらどうでもいいことですが、「民法の入門書として最適な一冊選手権」は、そもそも成立しないことが2年越しでわかりました。
この本は、「もう一度学ぶ」とタイトルにあることからもわかるように、決して単なる「入門書」ではありません。

表紙の食欲を増進させるようなオレンジ色。どことなく親しげな印象を与えるゴシック体のタイトル。そして図表や挿絵(P133の挿絵がシュール)などから、非常に手に取りやすい一冊という印象を受けます。
また、構成、文体、説明のどれをとっても非常にわかり易い。
しかし甘くみてはいけません。
この本に書かれている内容は、「一度民法を学んだ人」でないと、すんなり理解しながら読み進めることはできないのではないでしょうか。

もちろん、法務担当者のための民事訴訟対応マニュアルを書かれた田路先生の本です。
わかり易さという点においては非常に工夫されています。
ですから「一度民法を学んだことのある人」にとっては、民法(商法も一部含みます)が契約や契約書においてどのように使われているのか、とてもよく理解できることと思います。

このあたりは目的がはっきりしていて、大学や資格試験予備校などである程度民法を学習した経験のある法務担当者が、知識を再確認したり、そのような知識を契約実務においてどのように活用するのかを知る、という点に砕身されたものと思います。


ということで、例によって目次を抜粋したいと思います。


第1章 企業法の体系と民法
第2章 契約締結前の法律関係(信義誠実の原則の問題)
第3章 契約の締結ー意思表示と代理(民法総則の問題)
第4章 契約の解釈(契約総論の問題)
第5章 債権の効力と消滅(債権総論の問題)
第6章 取引の終了
第7章 契約を巡る紛争解決(裁判と執行の問題)



このように、「契約の締結段階から契約が終了するまで」の一連の流れを通して、法務担当者が知っておくべき条文・裁判例・契約書作成の方法などをおさらいすることができる構成となっています。
換言すると、学校などで学んだアカデミックな知識と企業法務実務との架け橋として最適な一冊と言ってもいいのではないでしょうか。

各章とも、「設問→大きな話→小さな話」という流れが徹底されていて、また、必要な箇所で必要な条文が記載されています。
そして学説などには踏み込まず、裁判例をわかり易く採り上げるというスタイルが徹底されています。
記述のレベルも、「この程度の知識は持っておいてほしい」という意味でまさに「絶妙」です。


私の働いているところでは時間の都合から、「買ってあげるからきっちり読んでおいて」という方法になってしまいますが、できることなら、この本を使って研修をしたいものです。
必要に応じて口頭で補足していけば、この一冊でかなり充実した研修ができるのではないかと思います。


そのようなわけで、是非読んで頂きたいオススメの一冊です。
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前回のエントリーの続きです。
更新しないときは完全に放置し、更新するとなると鬱陶しいくらい更新する気まぐれブログですみません。


さて前回は、
「東京都暴力団排除条例」は決して他人事ではなく、あなたの会社にも影響があるのですよ!
というところで終わっていました。
今回はその続き、ではどう影響があるのか、という点について触れたうえで、遠慮がちな提案の一つでもしてみたいと思います。

まず、東京都暴力団排除条例についてお話する前提として、各都道府県の取組みについて少しだけ触れておく必要があるのではないかと思います。
全国的にはじめて、条例レベルで総合的な暴力団排除を明確に打ち出したものは、「福岡県暴力団排除条例」で、2010年4月1日から既に施行されています。
ちなみに私は福岡出身なのですが、昔は「外車を見たらそのスジの人と思え」と教わったり、高校生の頃には通学途中の同級生が事務所(もちろん弁護士事務所などではありません)に連れて行かれたり、ということを見聞きしていたので、福岡県がいち早く対応したことに、「さもありなん」と思いつつも、少々複雑な心境でもありました。

そして現在、「NBL952号」によれば、2011年4月1日時点において、暴排条例が制定されている都道府県は46、施行されている都道府県は30にのぼるとのことです。
すなわち、東京に本社がある会社であっても、全国規模で活動されている会社であれば、それぞれの都道府県の暴排条例についてケアしておく必要があるということにもなります。
というのも、現在各都道府県で公布・施行されている暴排条例は、概ね福岡県暴排条例と同様の構成となっているということであり、その特徴として、暴力団などの反社会的勢力だけでなく、事業者も規制の対象となっているところに特徴があるからです。

しかしそうはいっても、全ての都道府県の暴排条例を調べてそれぞれに対応策を講じるというのは現実的ではないでしょう。
そこで例えば、東京に本社を置いているような企業であれば、少なくとも東京都暴排条例についてはじっくりと検討し、契約書にいわゆる暴排条項を盛り込むなどして、反社会的勢力との関わりをもたない、またうっかり関わってしまった場合には速やかに関係を断ち切るということを考える必要があるのではないでしょうか。

具体的に東京都暴排条例の条文を採り上げてみますと、「第3章 都民等の役割」には、以下のようなことが規定されています。


第18条 事業者は、その行う事業に係る契約が暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなる疑いがあると認める場合には、当該事業に係る契約の相手方、代理又は媒介する者その他の関係者が暴力団関係者でないことを確認するよう努めるものとする。
2.事業者は、その行う事業に係る契約を書面により締結する場合には、次に掲げる内容の特約を契約書その他の書面に定めるよう努めるものとする。
一 当該事業に係る契約の相手方又は代理若しくは媒介をする者が暴力団関係者であることが判明した場合には、当該事業者は催告することなく当該事業に係る契約を解除することができること。
(2号以下省略)


つまり誤解を恐れず単純にいえば、いわゆる「反社チェック」を行ったうえで、契約書には暴排条項を盛り込みましょうね、という努力義務を企業が負うこととなっているのです。

そして「第5章 違反者に対する措置等」においては、以下のような規定が設けられています。説明がわかり易いのでNBLから引用します。


(略)暴力団と知らずに取引を開始してしまい、関係遮断をしたいが踏み切れていない者については、自主的な関係遮断に向けた手続となっている。すなわち、利益供与の事実を自主申告し、関係遮断を警察に誓約すれば勧告をされず、警察等による助言・指導や保護措置がなされるが、このような適用除外に当たらなければ公安委員会による勧告がなされ、これにさらに違反した場合には公表されることになる(略)


※強調部分は管理人によるものです

つまり、うっかり取引をしてしまった場合には罰則こそないものの、場合によっては企業名が公表されてしまうという、レピュテーショナルリスクが存在するわけで、これは企業にとって大きな問題となり得ます。

さらにいえば、蛇の目ミシン事件最高裁判決以降のコンプライアンス、内部統制に関する議論の流れから考えても、上記のような
      反社チェック → 暴排条項
という対応すらしていなかった場合には、取締役の忠実義務、善管注意義務違反を問われる可能性は以前にも増して高くなってきているものと考えるべきでしょう。

以上のようなことから、企業法務担当者の皆さんとしては、「反社チェックと暴排条項」、これだけは忘れずに対応していく必要があるのではないかと考えているわけです。
なお、暴排条項のテクニカルな部分に関しては、以前に何度か紹介していますので、ここでは割愛したいと思います。ご興味のある方は、前回のエントリーから辿って頂ければと思います。
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